刺されたら猛烈なかゆみが!コロナ禍で被害急増「ス×ベ虫」の生態と対策

 新型コロナウイルスの影響で、日中は窓を開け換気を心がける家庭も多いはず。ところが、そんな環境をこれ幸いとして、「ス×ベ虫」なる害虫が島根県や鹿児島県を中心に暴れまわっている。

 ス×ベ虫とは別名「ヌカカ」と言われる、体長約1ミリほどの「ハエ」の仲間。

「ヌカカにそのような別称がついた由来は、小さすぎて本人が気付かないうちに衣服の下に潜り込むことからで、ハエの仲間と聞くと刺すイメージはないかもしれませんが、実はこのハエは血を吸う、小さな吸血鬼。一部地域では古くから『ス×ベ虫』『エ×チ虫』などと呼ばれ、煙たがられてきたんです」(サイエンスライター)

 ヌカカは日本全国に分布しており、発生時期は6月中旬から10月下旬。

「つまり、これからの時期が彼らにとっては最盛期。ヌカカは水辺に生息しているので、バーベキューや川遊び、海水浴といった夏のレジャー、田植え作業時などに被害が発生するケースが多く、この時期はどうしても肌の露出度も高くなっているため、ヌカカにとってはまさに”格好の餌食”というわけです」(前出・サイエンスライター)

 では、そんな厄介な虫に刺されないためには、どんな点に気をつければいいのか。

「釣りなどで一定の場所にとどまる場合は、防虫スプレーを身体全体にかけ、虫よけ線香を置いておくことです。あと、衣服の隙間から入ってくるので、出来るだけ隙間を作らないよう心がけるといいでしょう。また、海水浴の際もベースとなる場所に、虫よけ線香を置き、基本ヌカカを見つけたらすぐに移動することです。というのも、ヌカカは集団行動の生態を持つため、一度刺したら何度でも刺してくる可能性があるんです。一匹の被害であれば症状が出ても耐えられますが、集団に襲われ、一気に数十か所を刺されてしまうと、猛烈なかゆみが1カ月以上続くこともあります」(前出・サイエンスライター)

 通常、ブヨなどに刺された際は、かゆみが直後に現れる。しかし、ヌカカの場合、数日を経てから腫れやかゆみがやってくるため、増していくかゆみに耐えられず、全身を掻きむしり、結果症状を悪化させるとともに、痕になってしまうことも少なくないという。

「虫刺されで人体に入る毒素は、タンパク質を由来としていることから、熱を与えると分解されやすくなります。なので、肌にヌカカが付いていると気付いたら、既に刺されていると認識して、できれば45度くらいのお湯を患部にかけ流し、温めるといい。ただ、刺されて数日後の処置は、冷やしてステロイド系の軟膏を塗ること。既に腫れてしまっている場合、温浴療法は逆効果になるため、とにかく冷やすことが大切になります」(前出・サイエンスライター)

 最近は、内服薬のかゆみ止めもあるそうなので、刺されたら迷わず病院へ駆け込むべし。

 6月19日には産経新聞が、「猛烈なかゆみ、網戸すり抜ける『ス×ベ虫』被害増加」と題して記事を掲載したことで、SNS上でも、《網戸をすり抜けてんじゃねえよ。油断もすきもない!》《虫ってそゆことね、「いてっ!刺されたッ!」からヘンな気にさせるラブロマンス風の昆虫じゃないのね》などと、その存在が一気に認知されることになったヌカカ。新型コロナウイルスの弊害は、こんなところにまで波及しているということか……。

(灯倫太郎)

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