「夜の街」を襲うコロナ余波、新宿区の“感染者見舞金”に「働くより稼げる」

 日本全体が経済をまわそうと動き出す中、安倍政権は「第2波」にそなえて水面下で「罰則付きの外出制限」を企てているという。もし現実となれば、首都機能が完全にマヒするのは明らかだ。

 一方、小池百合子東京都知事は「夜の街」をやり玉に挙げて、コロナの事態鎮静化を図ろうとしていた。6月14日に、新規感染者47人中18人が新宿エリアにあるホストクラブの従業員であることが判明すると、

「いわばクラスター(感染者集団)で、今までとは性質が違う」

 と、説明するのみ。その後も夜の街からクラスターが出ても、特に対策を打ち出す様子は見せていない。さながら「夜の街」がコロナの犯人、とばかりに厳しい視線を向けるのみ。これには新宿・歌舞伎町で働く水商売関係者も不安を隠せない。

「19日から全面解除されて、堂々と営業開始できるようになっても、小池知事が『夜の街』をやたら連呼して強調するので、お客さんがどれだけ戻ってきてくれるのか‥‥。先日、新宿区は区内在住者が新型コロナに感染した場合、1人あたり10万円の見舞金を支給する方針を固めたそうですが、『働くより感染したほうが稼げるかも』という笑えない冗談も聞かれます」

 都職員が東京アラート解除前に歌舞伎町界隈で行った「見回り隊」もまったく効果はなく、小池氏のパフォーマンスにつきあわされただけのようだ。

 しかもその裏では、都のフトコロ事情が怪しくなっている事実も見逃せない。

 今年3月末の時点で9345億円あった「都の貯金」にあたる財政調整基金が、新型コロナの対策で95%まで取り崩され、今や残高は493億円のみなのだ。元国会議員の政策秘書で作家の朝倉秀雄氏が語る。

「緊急事態なのでしかたないと思います。この先、第2波が来た時には、地方債を発行して財源を確保することも想定されます」
 一方で、経済評論家の佐藤治彦氏はこう懸念する。

「都の貯金が枯渇してきたため、再び自粛を要請しても休業要請に応じた店舗に支給するお金がない。それで、小池さんは経済最優先に舵を切ったのかもしれません」

 もしこのタイミングで東京五輪が中止になれば、感染第2波とダブルパンチを食らい、都民はノックアウト寸前になりそうなのだ。

 コロナ余波は「夜の街」だけにとどまらない。これまで自粛を余儀なくされた各業種も容赦なく追い込まれていた。

 6月16日までに新型コロナの影響で倒産した企業は、全国で250社に上ったことが帝国データバンクの調査で判明。緊急事態宣言が発動されてから、臨時休業や時短営業を強いられた外食産業は大量の閉店ラッシュが始まっていた。

 ファミレスの「ジョイフル」は直営713店のうち約200店を徐々に閉店することを発表。居酒屋チェーン大手「ワタミ」も客足が激減し、今後の採算が見込めない国内65店舗の閉店を決めた。また、大阪では巨大なふぐの看板が名物の老舗ふぐ料理屋「づぼらや」が9月に閉店することになり、衝撃が走っている。

「外食産業は新型コロナの影響で2月から売り上げが下がりっぱなし。死ぬ思いで耐えてきたのに、今度は罰則付きの外出制限となれば、ますます客足は落ちて失業者が山ほど出ます」(佐藤氏)

 そんな中、総務省が発表した4月の完全失業率は2.6%。こんな状況下でも前月比で0.1%しか悪化していないように思えるのだが、数字の「ごまかし」と批判するのは佐藤氏だ。

「他の先進国と日本は失業率のカウントのしかたが違います。日本は仕事がないけど感染を警戒して求職していない人は、失業者と見なされません。休業者もカウントしませんが、すでに約600万人に達しています。この先、コロナの影響が長引き、休業者から失業者になるケースもあるでしょう。私たちが実感する数字と国の出す数字には大きな誤差があります」

 国の数字を鵜呑みにできないのは、他のデータからも明らかである。

 東京都が発表した4月の死者数は1万107人。過去4年間の平均死者数と比べても1000人以上を上回り、超過死亡(平年の死者数と実際の死者数を比べて、超過した人数のこと)が起きていた。しかし、新型コロナ感染による都の死者数は104人に過ぎず、公表以上に新型コロナで亡くなった人がいるのではないかと、疑問視されている。

「安倍政権がやっていることに信頼感がないので、出てくる数字を疑ってしまうんです。新型コロナの感染リスクだって、安全対策は進んでいません。例えば満員電車の時間帯に利用する人には定期的に検査を受けさせる。飲食店でも従業員に検査させ、陰性であれば安全を証明するシールを店先に貼るなど、なぜ仕組みを作らないのか。国民はまず安心したいんです。第二次補正予算でどれだけお金を遣っても、それがわからなければ経済は回っていかないのです」(佐藤氏)

 休業要請が全面解除され、新たなステージに突入した日本。第2波におびえて自粛の「罰則法制化」を進める安倍総理には、もはや国民の気持ちをくんで、経済と安全について考える余裕はないのか‥‥。

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