11月の大統領選に向け、3カ月半ぶりに遊説を再開したトランプ米大統領。その選挙集会が6月20日(現地時間)、オクラホマ州タルサで開かれた。
ところが、1万9000人が収容可能な会場に当日集まったのは、わずか6200人あまり。結果、屋外で予定されていたイベントも中止に追い込まれる騒ぎになった。
この事態をうけ、米紙ニューヨーク・タイムズは21日の誌面で「K-POPファンが、欠席を前提として参加登録することをSNSで呼びかけ、それがTikTokを通じて瞬く間に広がった可能性がある」と大々的に報道。
K-POPファンとは、その名の通り、韓国のアーティストや楽曲を応援するファンのことだが、最近彼らの抗議行動などが何かと注目を浴びている。K-POPファンに詳しいジャーナリストによれば…。
「現在の日本のテレビメディアで流れる音楽は、政治的なメッセージをはらむものが少ない。いわばスポンサーや世論を刺激しない、安全なものです。一方、常に社会と連動しているK-POPは、こうした忖度がないため、特定のターゲットを攻撃することもあります。その反面、何かあれば、アーティストも楽曲も即批判の対象になるなど、政治とも切り離せない存在になっている。それが、SNSが発達した現在は、英語圏で国籍やルーツ、年齢を問わない大きなコミュニティを通して発信されることで、ひとたび社会運動と結びつけば、『オンライン版の人海戦術』として圧倒的な威力を発揮しています」
今回のトランプ氏への攻撃は、アフリカ系米国人ジョージ・フロイドさんの暴行死を受けて発生した「黒人の命は大事」(Black Lives Matter、BLM)という抗議運動が発端だったという。ところがこの運動を埋没させようと、「白人の命は大切だ」(White Lives Matter)といったハッシュタグを掲げる反対勢力が出現。そこで「黒人の命は大事」運動に加勢し、SNS上で“白人運動勢力”を圧倒したのが全世界のK-POPファンだという。
「5月末には、デモ参加者と警官の衝突が広がるなか、テキサス州ダラス警察が自前アプリで『抗議デモ中に違法行為している者を見つけたらビデオをあげて欲しい!』と報告をつのるツイートを行ったところ、これに対抗したK-POPファンが、なんとこのアプリに大量のK-POPスターの動画や写真を張りつけて、機能させなくしてしまったんですね。その手法の是非はともかく、一度ターゲットにされたら最後、スパム攻撃をしかけられたり、ソーシャルメディアを乗っ取るなんて当たり前、そんな彼らの手口に実はトランプ陣営も相当の脅威を憶えているといいます」(前出のジャーナリスト)
今回の選挙集会開催前には「100万人超の申し込みがあった」と豪語していたことに加え、現大統領が、「オンライン版人海戦術」に振り回されたとあっては赤っ恥、と考えたのだろう。タルサでの集会後、トランプ氏の選挙対策責任者ブラッド・パースカル氏は声明を発表。参加予約は先着順だったとし、「偽の予約があったとはまったく考えてない」と説明。あくまで、メディアが参加予定者たちを欠席へと思いとどまらせたのだ、と主張した。
「ただ、6月8日のトランプ氏の誕生日に募集したバースデーメッセージにも、K-POPファンからいたずらメッセージが殺到したといいますから、陣営としても11月の選挙まで、K-POPファンによる嫌がらせに悩まされることは間違いないでしょうね」(前出のジャーナリスト)
K-POPファンはその多くが10代の若者、特に圧倒的に女性が多いといわれるだけに、かつてはプレイボーイと言われたトランプ氏もその扱いには、頭が痛いかもしれない。
(灯倫太郎)