6月21日、神宮球場で行われたヤクルト−中日戦で例年通りの試合なら起きる事のなかったハプニングが起きた。9回開始前、中日・与田監督は「実況ブースから『捕手がインコースに構えた』などの声が聞こえる」と、実況が選手たちに筒抜けであることを審判に指摘し、試合が一時中断となった。報告を受けたセ・リーグ統括は「各球場に注意を促す」と返答している。実はこの「実況丸聞こえ」が起こったのは今回だけではない。
今年3月1日ナゴヤドームで行われた中日−広島のオープン戦でも事件は起きていた。6回2死1塁、中日の期待の新人左腕・橋本侑樹が広島・長野久義を1ボール2ストライクと追い込む場面では実況席も大盛り上がり。解説が「ここでズバッと内角にきたら面白いですね」と話した直後、解説の期待通り捕手・木下拓哉が打者の内角に寄った。その構えに「木下拓が内角に寄ったぁ!」と実況・江田亮アナ(CBCテレビ)の白熱した実況が静まり返った球場に筒抜け。終了後、江田アナは「熱戦に水を差すところでした」と苦笑いしていたという。
この「実況丸聞こえ事件」はネット上で話題になり、《声が大きくなるのは実況の仕事を頑張っているだけのこと、球場側が対策してあげないと実況可哀想》と実況アナに同情する声が多くあがった。
無観客試合によるプレーへの弊害は他にもある。
「静まり返った球場の中ではキャッチャーの構えるときの足の音でバッターに投げるコースがわかってしまいます。それでキャッチャーたちはできるだけ音を立てないように気を使っているのですが、かがんだ姿勢でそっと動くことはキャッチャーにとってかなりの負担になるのです。普段よりも疲労が溜まると漏らしている選手もおり、今年はキャッチャーの選手層が厚いチームが優位に立つのではないでしょうか」(スポーツライター)
新型コロナウイルス感染拡大予防の為、プロ野球は史上初の無観客試合での開催を決行。いざ試合が始まると、実況が選手に聞こえてしまうという弊害があることがわかった。《実況もリモートにしたら?》《防音設備を大至急備えないと》《試合中も音楽流そう》と野球ファンの間でさまざまな対策案が議論される中、今後主催側はどういった対応を取るのだろうか。無観客ゆえの弊害の解消に注目だ。
(浜野ふみ)