自民党を離党しても「トカゲのしっぽ切り」で済ませるわけにはいかない——。自民党政権の責任を追及する声はますます強くなりそうだ。
《被告を懲役1年6月の刑に処す。ただし5年間は刑の執行を猶予す》
6月16日、昨年の参院選で公職選挙法違反に問われていた自民党の河井克行前法相(広島3区)と妻・案里氏(参院広島)の公設秘書に冒頭の有罪判決(求刑1年6月)が下った。
「広島地検が河井夫妻の秘書2人を含む計3人を公選法違反(買収)の疑いで逮捕したのは3月3日のこと。その後4月には、安芸太田町長や廿日市市議会の元議長らが克行氏から20万円を受け取っていたことが判明し、夫妻が県議と広島市議の計12人にも現金を持参していたことも明らかになった。そこで、検察当局は5月の大型連休中に夫妻を任意で聴取し、夫妻の自宅から現金配布先とみられるリストを押収したとされています。そんなこともあり、検察当局としては、国会閉会を待って克行氏と案里氏を買収容疑で立件したい。ですから、この裁判の行方に俄然注目が集まっていたんです」(政治ジャーナリスト)
案里氏が参議院選で初当選したのは去年7月だが、選挙の前に、夫・克行氏の政党支部に党本部から合わせて1億5000万円が振り込まれていたことが発覚。
「党本部の資金は党員たちから集められた党費、または税金から支出される政党交付金などがあるのですが、その際、河井夫妻側に提供された1億5千万円の多くは、政党交付金が元資だった。ところが、案里氏の党支部が選挙運動費用として拠出したとする額は2405万円。提供資金の全額を充てたとしても、残る1億2千万円余りの行方が明かされていない。そこで河井夫妻による『ばら撒き疑惑』が噴出したというわけです」
さらに、この買収疑惑と政府による特別定額給付金の遅延に重なったこともあり、ネット上では《候補者に1億5000万円はポンと出すのに、補償はしぶる自民党は腐ってる》《ニュースで見たけど、町長に20万円バラまいて国民にはいまだ10万円がとどかず…ってどういうこと?》といった批判の声が続々。
地元・広島では自民党から大金を引き出した案里氏の”手腕”に「最大限オンナをアピールした結果では?」との声が根強いが、「広島という土地柄、新人議員には容赦ないヤジが飛ぶことは日常茶飯事。案里氏に対しても、当時はとても活字にできないような罵声が飛んだものです。しかし、そんな逆風がある時を境にピタリと収まった。なので、『宴席などで“オンナ”をアピールした根回しが功を奏したのでは』と噂する関係者も少なくありませんよ」と、案里氏の県議員時代を知る関係者も振り返る。
とはいえ、たとえ、それが事実だったとしても、夫妻はいったいどうやって1億5000万円もの選挙資金を自民党本部から引き出したのだろうか。
「現職だった溝手顕正氏は、その10分の1の1500万円しか提供されず、選挙で落選していますからね。真相は今後の展開で明からになっていくことでしょうが、溝手氏との露骨すぎる“格差”が露見したことで、広島県連の自民党への不信感が募ったことだけは間違いありません」(前出・関係者)
国会の会期末は6月17日。国会閉会により、検察の動きが加速することは必至。6月16日には関係者が明らかにしたとして、河井夫妻が自民党から離党する意向とのニュースがいっせいに流れた。これを自民党の責任逃れと見るむきは少なくない。「Xデー」は訪れるのだろうか。
(灯倫太郎)