今年の夏の世界自然遺産登録が期待されている奄美大島。アマミノクロウサギ等の希少種の生物の生息などが評価されてのことである。しかし、その裏で世界遺産登録のために犠牲となっている生き物がいる。自然の中で生息する猫、ノネコである。希少種の生物をノネコが襲うという理由から、環境省主導でノネコの駆除が進められているというのだ。
「2018年にユネスコから、奄美大島のノネコ対策に関する情報照会があったことが、環境省の背中を推している理由だと言われています。殺処分されるノネコの数ですが、環境省の計画では3000匹にのぼるのではないかと言われています。というのも、環境省がノネコ駆除を推進すると発表した期間(2018年〜2027年の10年間)に、年間の駆除目標を300匹から360匹としていることから導き出された数字です」(社会部記者)
この殺処分計画に対して公益財団法人どうぶつ基金をはじめとする動物保護団体は「ノネコが在来種の脅威だとする数字的根拠には妥当性がない」などを理由に反対運動を展開している。環境省は単にユネスコへのパフォーマンスとしてノネコの殺処分を進めているだけだ、というのだ。しかし、新型コロナ騒動により、県外に拠点を置く保護団体の活動が制限されている状況が続いている。
島外へと保護・避難させようとする活動もままならない状況で、にわかに注目を集めているのが、現環境大臣である衆議院議員・小泉進次郎の妻、滝川クリステルが代表理事を務める一般財団法人クリステル・ヴィ・アンサンブルである。当団体は犬猫の「殺処分ゼロ」を掲げているだけに、奄美大島の「3000匹殺処分計画」に、真っ先に反対の声明を出してほしいところだが、今のところそうした動きは見られない。動物保護団体職員に匿名で話を聞いた。
「クリステルさんが設立した団体の過去の活動をみると、家庭で飼うことができなくなった犬猫と野良猫や野良犬が対象である印象を受けます。野犬、そしてノネコは保護範囲には入っていないのかもしれません。実は、法的にもノネコは完全に区別されています。街で暮らす猫が野良猫を含めて動物愛護管理法の下にあるのに対して、ノネコは鳥獣保護管理法の下にあり、その“処分法”に法的規制はありません。クリステルさんの活動は、いわば動物愛護管理法範囲内に限定された、いわば世間受けのいい活動といった印象を受けます。まあ環境大臣の妻としては、鳥獣保護管理法という、これまで触れたことのないゾーンに触れるのをためらう気持ちは十分に理解できますが…」
渦中の奄美大島ではアマミノクロウサギの個体数の増減とノネコとの因果関係を示すデータがいまだ明確に示されていないという話も聞く。また、そもそもノネコという動物種は存在せず、野良猫とノネコの選別基準についても、もしもノネコが少しでも人間社会に依存した食生活などが確認されれば、それはもうノネコではないとする説が有力だ。ノネコという聞きなれない言葉に惑わされることなく、確固とした姿勢を見せてほしいものである。
(オフィスキング)