「サッカー界は元に戻らない」メッシが“コロナ悲観論者”になったワケ

 バルセロナに所属するアルゼンチン代表FWリオネル・メッシがスペイン紙「El Pais」のインタビューに応じ、新型コロナウイルスの感染拡大によるサッカー界への影響について言及した。

 ヨーロッパでもとりわけ深刻な感染の被害が出てしまったスペインでプレーするメッシは、同紙の取材に対して、「僕らは皆、新型コロナウイルスの影響でこの世界がこれからどうなってしまうのかという点に不安を感じている。世界中の誰しもがコロナによる影響を受けてしまったからね。親しい人間や家族、そして、中には別れの言葉すらも言わせてもらえなかった人たちがいる」とコメントし、コロナ禍がもたらした世界の変化に言及。

 続けて、「この世界的な危機は多くのネガティブな事象を招いたが、愛する人間を失うことよりも悲しいことは存在しない。自分もそういった事実に悩まされたし、皆不運な境遇だと感じている」と加えると、「サッカーの世界は、人々の日常生活のように元通りになってくれるとは思えない」とアフターコロナにおけるフットボールの在り方を懸念している。

「ロイター通信によれば、スペインでは国内での抗体検査の結果、実に総人口の5%にあたる230万人が感染している可能性も指摘されるなど、まだまだコロナとの深刻な闘いは続いています。そうした状況下において、メッシがサッカー界の完全復活に向けて悲観的になってしまうのは、当面の間、無観客での試合開催がメインとなってしまう点に加えて、やはり多くの人間が国境をまたぐキッカケとなる国際大会の開催危機もあるでしょう。とりわけ2022年にカタールで開催が予定されるW杯への影響や、すでに2020年の開催が延期となったコパ・アメリカは、メッシがキャリアの集大成として、代表チームのメダル獲得を望んでいるはず。所属するバルセロナでは欧州チャンピオンズリーグや国内リーグ制覇、そしてバロンドールの獲得など、あらゆるチームタイトルや個人タイトルを手にしてきたメッシにとって、唯一足りないトロフィーがW杯を含むナショナルチームでのタイトルです。この点が、メッシが母国のカリスマであるディエゴ・マラドーナ氏に劣っている部分だと指摘されることも多く、メッシのラストミッションとなるはずでした。しかし、コロナ禍の爪痕が、残された夢の実現を阻んでしまうリスクを、誰よりもメッシ本人が恐れているのではないでしょうか」(スポーツライター)

 メッシは2018年ロシアW杯予選前に過剰な母国でのバッシングにより、一時アルゼンチン代表からの引退を示唆し、慌てた周囲からの説得によって復帰した経緯がある。

 しかし、全盛期として臨んだ同大会も決勝トーナメント1回戦で敗退し、2014年のブラジル大会では決勝戦でドイツに敗れるという憂き目も経験。全てを手に入れてきたメッシが、どうあがいても獲得できなかったW杯のトロフィーだが、最後はコロナウイルスに妨害される可能性も出てきてしまった。

 仮に順調に開催されれば、次回のカタール大会ではメッシは34歳となり、事実上のラストチャンスになる。果たして、フットボールは無事に“元に戻る“のか。今はただ、メッシの予測が外れてくれることを祈るしかなさそうだ。

(木村慎吾)

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