「夏の第2波襲来」ならクーラー風下で集団感染!コロナとの“共存”は永遠に

 未知の脅威に直面した人類は、増え続ける犠牲者の数におびえ、家に閉じこもる日々を過ごしている。ようやく嵐は過ぎ去ったと思ったのも束の間、9月には感染「第2波」が襲来するという。こんな時だからこそ、あえて、「殺人ウイルス」の立場から日本の未来をシミュレーション。見えてきたのは、立ちはだかる笑えない現実だった——。

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 まず自己紹介しよう。俺は新型コロナウイルスだ。名前は「COVID-19」。どこで生まれたかは、とんと見当がつかぬ‥‥と言いたいところだが、米国様は中国の武漢だと言い張っているから、そうなのかもしれないな。

 日本で戦後初となる緊急事態宣言が発令されてから約2カ月。ようやく次々と宣言が解除され、すでに収束ムードも漂って、気が緩んでいる人類もいるようなので、新型コロナを代表して俺がここに呼ばれたというわけだ。

 5月18日に大阪府の吉村洋文知事(44)がいいことを言っていた。

「第2波、3波の波がやって来るので、これからも感染拡大予防、ウイルスと共存する第一歩にしたい」

 そのとおりで、陽性反応が0人の日があったからといって、俺たちがいなくなったわけではない。

 では今後、どんな動きをするのか。その点については、米ミネソタ大学感染研究政策センターで、俺たちに関する3つのシナリオが報告されている。

 1つ目は、夏から1~2年の間に小規模な波を繰り返し、しだいに収束していくというもの。2つ目は秋から冬にかけて大規模な流行の波が発生する。3つ目は現在のままジワジワと進行する状態が続いていく。

 この中で人類にとってより脅威なのは、2つ目のシナリオだろう。なぜなら‥‥って、おい、俺たちの話に耳を傾けていない人類もいるようだな。だったら、専門家も交えてわかりやすく日本の未来をシミュレーションしてやろう。

 1918年3月に先輩ウイルスのスペイン風邪が世界中で猛威を振るい、9月には第2波が襲来。日本でも約38万人が亡くなっている。今回も同じような現象が起きるのか、だ。渡航者の感染対策などを専門とする関西福祉大学の勝田吉彰教授はこう話している。

「第2波が来るのは、まず間違いありません。ただ、当時は第一次世界大戦の最中で、病状などの報告は最小限に抑えられ、軍の中で感染者が出ても半ば極秘扱いだったんです。感染者にはスペイン風邪の存在が知らされていなかったので、ある日、気がついたら病気になって犠牲者が増えていきました。今はWHO(世界保健機関)のサイトを見れば海外の情報も載っているし、日本に第2波が来ても初動対応が発動できるので、スペイン風邪の時より抑えることはできるでしょう」

 まあ、人類が100年前よりも賢くなっていることは認めよう。

 正直、日本の「3密」作戦と外出自粛はかなり効果的で、生き延びるのに必死だった。俺たちも自粛解除されるまで静かにするしかなく、半ばお手上げ状態。それがここにきての解除は、人類にとって朗報かもしれないが、俺たちにとっても朗報なのだよ。そういえば、夏が来るとおとなしくなると思っている人類もいるが、そこはあまり期待しないでほしい。

 医学ジャーナリストの松井宏夫氏もこう指摘しているよ。

「新型コロナは日本とは季節が逆のブラジルやオーストラリアでも流行しています。5月いっぱいで収束しても、第2・3波が8月に来ることも考えられるでしょう。また、エアコンによる感染拡大も警戒しなければなりません。中国で実際に起きた出来事ですが、クーラーの風が直接当たる風上にいた感染者がくしゃみをしたらウイルスが風に乗って拡散し、風下で食事をしていた人が集団感染してしまったのです」

 俺たちとしては、感染してくしゃみやせきをさせればさせるほど、宿主(人間)を見つけて拡散や増殖することができるから、クーラーがガンガンに効いた夏場も生きやすい状況になりそうだ。

「米国の国立衛生研究所の発表で、ウイルスが霧のように空気中を漂うエアロゾル状態でも、新型コロナは3時間以上生存することがわかっています。ウイルスは付着したさまざまな素材によって生存期間が変化し、10円玉などの銅は最長4時間、段ボールは24時間、ステンレスは48時間ほど生存し、接触感染にも注意が必要です。これからもアルコール消毒は欠かせません」(松井氏)

 最後のアドバイスは俺たちにとっては耳が痛い話だが、こちらもしぶとく必死だということは知ってもらえただろう。

 それと言い忘れていたけど、第2波では遺伝子変異が起き、毒性が強まることがある。スペイン風邪の時は、第2波で10倍の致死率となって猛威を振るったんだ。でも、こればかりは「殺人ウイルス」と呼ばれる俺たちにもこの先、どう変異するのかはわからない。

「猛毒化することは考えられますが、ウイルスの立場になってみると、死亡率をグッと上げるのは、生存戦略としてあまりない話なんです。自分自身も生き延びないといけないので、エボラ出血熱のように致死率が高すぎると、感染するための宿主がいなくなるので、ウイルスとしては出来がよくない。一方で、インフルエンザは相当優秀なウイルスで、そこまで死亡者を出さずにグリーンランドまで広まっています。新型コロナも今の状態ですでに人間の世界に適応し、感染した人が重症にならず、軽症であれば自由に出歩けることも。死亡率もそれほど高くはなく元気なまま拡大しているので、インフルエンザのようになっていく可能性はあります」(勝田氏)

 なるほど、いい見解じゃないか。そうとなれば、天敵となる治療薬やワクチンの開発が気になるな。いつ頃から市場に出回るかだ。

 米バイオ医薬品企業のモデルナが開発を進めるワクチンについて、第1段階の臨床試験で良好な結果を示すデータが確認されたと報じられる一方、翌日には「情報開示が不十分」として雲行きが怪しいという話は、こちらにも届いている。

「世界中で急ピッチで進められていますが、開発は臨床試験だけでも段階を踏まなければならず、そこから申請し、承認されるまで簡単ではありません。早くても1年から1年半はかかると言われています」(松井氏)

 だから共存共栄、インフルエンザのように毎年のように再会して、永遠に仲よくしようぜ。そう言っておきたいところだが、人間社会が俺たちをどう受け入れるのかは実に興味深いところだな。そして、第2波で襲撃した時、経済と政治にはどういう変化が起きていくのだろうか……。

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