3月22日に「まん延防止」が全面解除され、すると春の日和も手伝って人手は増加。感染者も下げ止まりどころか徐々に増加に転じて、未だコロナの脅威は去るどころか健在ぶりが目立つ。そんな外敵がしつこくはびこる中、新たな外敵の浸食がジワジワと始まっている。今度は「アリ」だ。
「大阪空港の周辺で外来種のアルゼンチンアリが大量に繁殖していることがニュースで伝えられています。報道によると、空港の西側10ヘクタールの土地を調査したところ多数の個体が見つかって、倉庫などの施設の中でも確認されているそうです。その数1万匹以上。ただのアリじゃないかと言うかもしれませんが、専門家によれば電子機器やケーブルの中にも入り込む可能性があるということで、特に空港は安全第一な場所だけに、徹底した対策が求められています」(全国紙記者)
外来アリの侵入といえば、2017年にヒアリの被害が騒がれたことがある。なにしろ毒性が強く、人が刺されたら死ぬこともあるというぐらいの「最凶アリ」だっただけに、この時も脅威が叫ばれた。ところが今回のアリ、個体は小さく毒性もないからさして心配する必要はないように思えるのだが、どうも実態は全然違うようだ。
色は茶色で体は細く、長さは2.5〜3ミリほど。見た目もやはり何てことはなさそうに見える。ところがその性格は「食えるものなら何でも食う」という貪欲ぶりで、専門家によると食べ物を求めてどんな所にでも入り込むのだとか。強烈で少ない個体ならば対処のしようがあるが、むしろ小さい個体が大量にはびこるという方が実は厄介なものだ。おまけに繁殖力が高く、「史上最強の侵略的外来種」との呼び声すらある。
「原産地は南アメリカで、世界が交易で結ばれるようになったこの150年間で世界中に分布を広げ、“世界的害虫”として問題になっているといいます。日本では93年に広島で見つかって以来、東京や大阪、愛知といった大都市でも確認されていて、ジワジワと生息範囲を広げています。とにかく何でも食うので、生態系・農畜産業・人家への悪影響が懸念されます。被害に遭うと、『とにかく家の中に入ってくる』『犬の毛に入り込んで犬が夜通し鳴きやまない』『いつでもアリのことばかり考えてしまうようになる』といったように、その侵略性に精神的にも参ってしまうそうです」(同)
大量の動物に侵食されると言えば、古くはヒッチ・コックの映画「鳥」が思い浮かぶ。同作は、やはり普通は何でもない鳥が大量に発生して人間を周囲にまで追いやるというストーリーで、いかにも人間心理を逆なでする本格サスペンスのヒッチ・コックらしい作品だが、アルゼンチンアリの実態を聞くに、まさにあの世界を彷彿させる。
(猫間滋)