《朝までコロナ専門会議》(2) 「地球上の誰一人として基礎免疫を持っていない」

A 感染拡大が始まった当初、専門家の一部には「毎年流行するインフルエンザと大差はなく騒ぎすぎ」との声もありましたが(苦笑)、季節性のインフルエンザウイルスと今回の新型コロナウイルスとの決定的な違いは「日本人も含め、地球上の誰一人として基礎免疫を持っていない」という点にあるのです。

─人類史上最悪と言われたスペイン風邪のように、恐ろしい未知のウイルスだということですね。

A その可能性は大いにあります。季節性インフルエンザの場合、人々はさまざまなタイプのウイルスに繰り返し感染することで一定の抗体価、すなわち基礎免疫を獲得します。その結果、あるタイプのインフルエンザが流行しても、おおむね感染しないか、感染しても重篤化しません。ところが新型コロナウイルスの場合、そのような基礎免疫を誰も持っていませんから、基本的には日本人全員どころか、世界中の人々が感染するまで、脅威は終息しないことになります。

─だとすれば、日本国内での死者数はどれくらいに膨れ上がるのでしょう。

B その数をできるだけ正確にはじき出そうとすれば、「致死率」と「死亡率」を区別する必要があります。致死率は「感染者に占める死者数の割合」で、死亡率は「人口に占める死者数の割合」です。このうち、致死率の分母となる感染者数は検査の実施数によって大きく変わるため、死者数を割り出すには致死率ではなく死亡率を用いるのがベターです。実際、新型コロナウイルスの致死率も、医療崩壊の深刻さの違いなどもあって、世界各国で大きな差があります。─では、新型コロナウイルスの死亡率はどれくらいに達するのでしょうか。

—では、新型コロナウイルスの死亡率はどれくらいに達するのでしょうか。

B その点については、感染拡大が現在進行中ということもあって、十分な信頼に足る数字はありません。ただ、3月30日、世界的にも権威のあることで知られる医学雑誌「ランセット」に〈新型コロナウイルスによる死亡率は、季節性のインフルエンザウイルスに比べ、依然として高い〉とする、注目すべき論文が掲載されました。論文によれば、季節性インフルエンザの死亡率0.1%に対して、新型コロナウイルスの死亡率は0.66%。今後、この数字はさらに補正されていく可能性がありますが、現時点では最も真値に近い数字とみていいでしょう。

─この数字を使えば、新型コロナウイルスによる日本国内での延べ死亡数を予測できるわけですね。

C そういうことになります。それにしても、この数字は驚きです。総務省の人口推計によれば3月1日現在の日本の総人口は1億2595万人ですから、その0.66%にあたる83万1270人もの日本人が亡くなる計算になるのです。

─予測される累計死者数は83万人超!?

【座談会出席者】
A=感染症の専門医
B=公衆衛生学の専門家
C=危機管理の専門家
D=政府関係者

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