あのカルト集団を徹底追跡(4)有名ラーメンチェーンとヘイト団体

 全国で目にするチェーン店「らあめん花月嵐」。そのバックに右翼的なカルト集団があるという噂を耳にしたことがあるだろうか。

 これは事実だ。「日本平和神軍」という団体で、代表者である黒須英治総統は「らあめん花月嵐」の運営母体であるグロービート・ジャパン社(以下、グ社)の会長でもある。平和神軍は軍服姿で公道を行進するなどの「コスプレ」や、中国人や朝鮮人への差別発言を繰り返しており、90年代からネット上では有名な存在だった。今で言うならヘイトスピーチ団体である。

 平和神軍とグ社の関係を調査しサイトでまとめていた会社員男性が、03年にグ社から名誉毀損を理由に民事訴訟を起こされニュースになったことがある。裁判で男性は負けたものの、裁判所は平和神軍とグ社に関係があることは認めた。

 平和神軍はグ社への影響に配慮して、すでに解散。代表の黒須氏は別途、「正理会」なる宗教団体や「イオンド大学」で活動してきた。イオンド大学は正規の大学ではなく、金を払うと「博士」などの名称の肩書を授与してくれる「学位販売会社」だ。この手の会社は古くから世界各地に存在し、日本の文科省も「ディプロマミル(学位工場)」と呼んで問題視している。

19年に行われた杉並区議選。この平和神軍の元幹部の佐々木千夏氏が「NHKから国民を守る党」公認で立候補し、当選した(直後に同党から除名)。佐々木氏は正理会の幹部でもあり、イオンド大学にも関わっている人物だ。

 当選後、当人に電話で話を聞くと、平和神軍の元「中佐」だとあっさり認めて、

「平和神軍にいた朝鮮人は皆、脱走して正理会は全員日本人です。正理会は仏教や神道の教えに基づいた団体で、カルト宗教ではありません。民衆をダマす幸福の科学や創価学会のようなことはまったくありません」

 と話している途中で、代表である黒須氏が電話口に出てきた。

「NHKを潰せないまでも、叩かないといけないんですよ。NHKには1000人も朝鮮人がいる。それが皆、偏向報道して南京大虐殺があったとか言ってるんです」(黒須氏)

 驚くべき言い分の根拠を尋ねると「そのくらいの情報は入ってくるんだよ!」と黒須氏は吐き捨てた。

 佐々木氏は当選後に区議会本会議で、室町から江戸時代にかけて李氏朝鮮が日本に送った使節団「朝鮮通信使」について「凶悪犯罪者集団」と発言。さっそく物議を醸している。

 有名ラーメンチェーンの会長は、今も懲りることなく、ヘイト団体の「教祖様」として君臨しているのだ。

 今回取り上げたカルト教団は、オウム真理教に比べれば、その被害は小さい。とはいえ、いずれの事件も風化させてはならない。カルトは姿を変えて、また巧妙な布教の手段を用いて、あなたに忍び寄ろうとしているのだから‥‥。

(ジャーナリスト・藤倉善郎)

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