若者を餌食にする「キャンパスカルト」の正体(4) 学祭の「心のエステ」に潜入

 大学の学園祭もカルト教団の信者獲得の場になっている。これを組織的に行っているのが「幸福の科学」だ。古くは91年の「FRIDAY」への猛抗議で世間を騒がせたが、昨今は大学設立を目指すなど、何かと話題を呼んでいる。

 その幸福の科学は全国の学祭で「心のエステ」なるものを出店し、宗教団体であることを隠して学生を呼び込んでいる。私は複数の学祭で「心のエステ」に足を運んでみたことがある。

 横浜国立大学の「心のエステ」では、いくつかの質問に答える性格診断テストのようなものを受け、学生信者から「秀才タイプですね」などと言われ、「あなたに贈る一転語」と題するメッセージカードを渡された。

 そこには〈愛を広げるために必要なのは、まず理解力です。『I’m Fine!』〉と書かれていた。最後に大川隆法総裁の著書名で締めくくられているということは、大川総裁の言葉なのだろう。だが、学生に尋ねると、「私たちは、大川隆法先生の著作のファンの集まりなんです」と言う。

 明治大学の「心のエステ」では、主催団体について「いろんな大学の学生の集まり」(学生信者)としか答えず、宗教団体であることを頑として認めなかった。

12年には早稲田大学の学祭で、「心のエステ」が「禁じられている個人情報収集を行っていた」との理由で出店中止処分を受ける。性格診断を受けた来場者に連絡先を書かせていたのだ。

 さらに、東京大学の学祭では「偉人カフェ」と称して、大川総裁の「霊言」に基づく性格診断を行っていたケースもある。ここでは、私が「霊言に興味がある」と告げると、「後日、幸福の科学の支部に来るように」と誘われた。その場で勧誘こそしなかったが、半ば勧誘のための出店であることを認めたようなものだ。

 今春は新型コロナウイルスの影響で入学式を中止する大学が続出している。授業開始を遅らせる大学もあり、新入生を歓迎するイベントも例年とは違ってくるだろう。だからといって、安心はできない。ここまで読んでいただいた方ならば、大学のそこかしこにカルト教団の落とし穴があることはわかるはずだ。

 そして、これは学生だけでなく、社会人であっても気をつけなくてはならない。ウイルスパニックはカルト教団にとっては、信者獲得の好機でもあるからだ。幸福の科学は教祖がコロナウイルスを撃退できると称して、行動を自粛するどころか「撃退祈願」のイベントを開催。顕正会は大規模イベント中止を信者に告知して〈いよいよ一対一の折伏(勧誘)を強め、広宣流布を進めようではありませんか〉と2月29日付で本部が通達を出した。

「統一教会も、イベントの中止を告知する一方で、信者は戸別訪問伝道を続けています」(鈴木氏)

 社会不安が広まっている今だからこそ、カルトの甘いささやきには注意が必要だ。

(ジャーナリスト・藤倉善郎)

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