若者を餌食にする「キャンパスカルト」の正体(1)旧友との再会が一転して…

 若い信者を獲得するため、大学を中心に学内に潜む「キャンパスカルト」。かつては宗教と無関係なサークルを装って、若者に近づいていた。しかし、その手口が社会問題化されるや、より巧妙に、標的の間口を広げる変化を遂げていた。

 A氏のもとに高校時代の友人から電話がかかってきたのは、大学入学直後のことだった。

「久しぶりに会わないか」

 数カ月前まで同じ学校に通っていたのに「大げさだな」と思いつつも、近況報告もしたかったので、A氏は友人に会うことにした。

 待ち合わせ場所の喫茶店に赴くと、友人の隣に知らない年上の男性が‥‥。戸惑いながらも席に着くや、挨拶もそこそこに始まった勧誘は延々と続いた。

「『お題目を唱えると運が上がって、彼女ができた』と友人は盛んに入信を勧めてきました。2人がかりで何時間も‥‥結局、根負けしてしまった。最初からこちらが『入信する』と言うまで、勧誘を続けるつもりだったのです」(A氏)

 執拗な勧誘をしてきたのは「顕正会」。もともとは創価学会と同様に日蓮正宗の信徒組織だった。しかし、創価学会が国立戒壇(日蓮信仰の国教化)論を放棄したことを理由に、顕正会は74年に東京の創価学会本部を襲撃。街宣車を突っ込ませて門を破壊し、信者約70人が敷地になだれ込んで大乱闘を演じ、12人が逮捕される事態となった。

 当時は「妙信講」と名乗っていたが、襲撃事件で講頭・浅井甚兵衛氏らが日蓮正宗から除名される。その4年後に東京都で単独の宗教法人の認証を得たのが顕正会だ。現在はさいたま市に本部を置いている。

 発足当初からの暴力的性格ゆえか、その強引な勧誘で、たびたび逮捕者を出している。〈大学生閉じ込め 入会迫る 顕正会の2人を逮捕〉(静岡新聞05年7月28日夕刊)、〈顕正会勧誘強要 組織的関与裏付けへ 相談3年で338件、手口似る〉(読売新聞07年1月12日)といった調子だ。

 逮捕容疑は強要だけでなく、監禁や誘拐まで含まれているのだから尋常ではない。暴力沙汰に巻き込まれなかったA氏は、まだマシだったのかもしれない。その後、A氏は脱会し、この友人との連絡を断った。いまだ、信者が知人をダマして呼び出す手口は続いているという。

 ただ、この勧誘手口は強引ではあるが、まだわかりやすいほうだろう。

(ジャーナリスト・藤倉善郎)

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