警視庁捜査一課が始めた「指名手配ツイッター」の思わぬ効果とは

「この顔にピンと来たら110番!」

 駅や交番などで見かける指名手配書。かつて有名だったものに、徳島県警が殺人容疑で全国指名手配をしていた小池俊一容疑者の、「おい、小池!」という手配書があった。役所にしては“粋な”コピーで小池容疑者の顔をいつの間にか記憶していた人も多いだろう。

 こうした手配書は警察庁や全国の警察署のホームページでも確認できるが、東京の警視庁捜査一課は犯人逮捕につながる新たな手法として、1月23日からツイッターに公式アカウント「警視庁刑事部捜査第一課」(@MPD_sousa1)を開設、手配写真や犯人につながる情報を随時配信し、幅広い世代への情報提供の呼びかけを始めた。

 長い逃亡生活の末に逮捕された事例としては、NOVAの外国人英語教師の女性を殺害して逃亡を図った市橋達也のケースが有名だろう。美容整形手術で自らの顔の特徴を変えながら離島にまで渡って人目を避けるなどし、2007年の指名手配から約2年間、警察の手から逃れ続けていた。09年に逮捕された時、手配書と逮捕時の写真の違いに驚いた人も多いはずだ。1997年に約15年に及ぶ逃亡生活を送りながら時効目前で逮捕された福田和子の場合もやはり整形して世間の目を欺いていた。

「そもそも指名手配というのは実は警察内部での“お達し”のことで、指名手配イコール手配書の配布にはつながりません。我々が目にするのは、指名手配の中でも『公開捜査』に踏み切ったもので、その場合は当然、犯人は逃亡にあらゆる手を尽くすことになります」(警視庁詰め記者)

 では、逃亡犯が自らの特徴を大きく変えていた場合、一般への情報提供の呼びかけはムダかと言えば、そうでもなさそうだ。市橋の場合は美容整形医院がカルテの整理をした際に、市橋との共通点に気づいた病院スタッフが通報をしたものだし、福田の場合も、潜伏先で利用していたおでん屋の店主が手配書に似ていることから通報、しかも、本人が飲食で利用した食器やビール瓶には手を触れずにしておき、そこから本人の指紋が検出されたという折り紙付きだ。

「手配書はダイレクトな目撃情報収集だけでなく、事件を風化させないという意味での効果もあるのです」(同前)

 アメリカの場合、手配の方法もまたユニークだ。テネシー州では週末に手配写真をビンゴゲームに用いて情報を集めている。手配写真に番号が付けられ、出たボールと同じ数字でビンゴが成立すれば、手配犯が勝者になるのだとか。オハイオ州では、飲酒運転で裁判所に出頭しなかったことから指名手配となった人物の顔写真をフェイスブックに公開したところ、その手配写真が気に入らなかった容疑者本人が、自分で撮った写真を警察に送り付けたことから逮捕に至ったケースもあるという。まさにお国柄が現れる。

 さて当のツイッター、現在でフォロワー数約1万7000人。コメント欄には感想や噂などの書き込みが目立つが、確度の高い情報は第三者に閲覧できないダイレクトメールで直接にやり取りできる。SNS時代に、「コールドケース」と呼ばれる長期未解決事件の解決なるか。

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