天才テリー伊藤対談「小泉純一郎」(3)原発は今後の選挙の争点になるはず

小泉 世界でたった1つ、核のゴミの処分場がフィンランドにある、と聞いたので、4〜5年前に一度行ったんだよ。固い岩盤でできた小島の400メートルぐらいの地下に作った2キロ四方の広場に埋めるだけなんだけど、それを約10万年間保存するっていうんだ。

テリー 10万年も?

小泉 それだけの時間をかけないと、放射能が抜けないらしい。あらためて、とんでもないものを扱っていることが理解できたな。

テリー 日本が原発ゼロに舵を切れないのは、代替エネルギーに不安があるからじゃないですか。

小泉 自然エネルギーがあるから大丈夫だよ。日本ほど自然の力に恵まれた国はないんだから。太陽光、風力、水力‥‥油なんか輸入しなくても十分にやっていける。福島の事故の前まで日本の自然エネルギーは全電源の2%程度だったのに、去年の経産省の発表では15%に増えているんだ。

テリー それはすごい。

小泉 そこに政府の支援が加われば、あと5〜6年で30%ぐらいまで増やすことも不可能じゃない。これが日本だけの話なら、「また小泉がバカなことを言っている」と思われるかもしれないけれど、ドイツは与野党一致で協力して、もうすでに原発なしで自然エネルギーの電力を30%以上供給しているんだからね。

テリー 僕がどうしてもわからないのは、そこまでの条件がそろっていながら、どうして自民党は原発を推進するんですか。ほとんどの国民は、福島の事故以後は「原発はいらない」と思っていますし、もし今、安倍総理が「脱原発!」と宣言すれば、支持率もずいぶん上がるはずだと思うんですが。

小泉 そうなんだよ。だから、「俺と同じでダマされているんだ」「こんなチャンスはないぞ」って総理に言っているんだよ。今、総理が原発をやめると言えば、党内はおろか野党にも反対する人はほとんどいない。与野党が協力して自然エネルギーを推進するという夢のような事業が実現できる、そういうタイミングはなかなかないんだから。

テリー それって憲法改正より、歴史に名を残せるかもしれない偉業ですよ。

小泉 本当だよ。それなのに、何を言っても苦笑いを返すだけなんだ。こんな簡単なことが、なぜわからないのかね。

テリー 例えば野党と組むなど、政治面から働きかけていこうなどとは思いませんか。

小泉 私はもう引退したから、政治家活動や政治運動は一切やらない。現場は現役の政治家に任せるつもりで、一歩身を退いているんだよ。

テリー このままだと、安倍さんの任期終了後も、次の総裁は原発推進を踏襲していくような気がするんですよ。それだと、小泉さんが声を大にして訴えても、何も変わらないことになってしまうじゃないですか。政界引退後も小泉さんはものすごく国民に人気があるし、影響力もある、特別な存在なのに。もっとも、細川護煕さんが「原発ゼロ」の公約を掲げて、都知事選に出た時は‥‥。

小泉 「東京都が原発を使わないと言えば、すごく影響があるから」と出馬したんだけど、舛添(要一)さんに負けたんだ。確かにあの時は、「それ見ろ。原発なんか争点にならないんだよ」なんて言われていた。しかし、時の流れっていうのがあるから。あれはもう5年前の話だからね。

テリー となると、原発は今後の選挙の争点になりますか。

小泉 うん。自民党は高をくくっているようだけれど、私はいずれ来ると思うね。

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