天才テリー伊藤対談「小泉純一郎」(1)経産省からの抗議は一切来ていない

●小泉純一郎(こいずみ・じゅんいちろう)1942年、神奈川県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、ロンドン大学に留学。72年、第33回衆議院議員総選挙にて自由民主党公認として立候補、初当選。以来、12期連続当選。88年、竹下登内閣で厚生大臣として初入閣するとその後も厚生大臣や郵政大臣を歴任。2001年、第87代内閣総理大臣に就任。「聖域なき構造改革」を打ち出すとともに、「郵政三事業の民営化」を改革の中心に据え、05年、郵政民営化関連法案を成立させる。06年、自民党総裁任期満了に伴い、総辞職して内閣総理大臣を退任。その後、11年の東日本大震災を機に「脱原発」を主張、講演会などで精力的に活動する。著書「原発ゼロ、やればできる」(太田出版)発売中。

 第87~89代内閣総理大臣を務めた小泉純一郎氏。09年の政界引退後は、「脱原発」をテーマに掲げて全国行脚の日々を送るが、その発言は常に注目されている。日本に原発はなぜ必要ないのか、安倍政権の印象、そして息子たちとの関係について、天才テリーが鋭く切り込む!

テリー ごぶさたしております。実は小泉さん、この連載に20年前にも出ていただいているんですよ。

小泉 20年前に?よく覚えているね(笑)。

テリー 1人で取材の現場にいらっしゃる政治家の方が珍しくて、当時ビックリしたんです。「息子の野球を見てきたんだよ」なんて話をされていました。

小泉 ああ、進次郎が桐蔭(学園)と試合して負けた時だ。

テリー そのあと、小泉さんは首相にもなられて、当時とは状況が違うじゃないですか。まさか、またアサ芸に出ていただけるとは思いませんでしたよ。

小泉 「今日、アサ芸の取材なんだ」って言ったら、周りにも「本当に?」なんて言われたよ(笑)。でも、私の講演会に来てくれる人たちとはまったく読者層が違うから、これは逆に貴重な機会なんですよ。できるだけ多くの人に原発のことを伝えたくて、いろいろなところに出るようにしているんだ。

テリー 最近出された「原発ゼロ、やればできる」という本、僕もすぐ読ませていただいて、大学院のレポートのテーマとして発表したんです。すごくいい本だから、ぜひ小泉さんに話を聞きたいと思ったんです。本の冒頭に「騙された自分が悔しい」「腹立たしい」とありますが、総理時代は原発に関して、どういうレクチャーを受けていたんですか。

小泉 まず、絶対安全でいちばんコストが安く、二酸化炭素を出さないクリーンエネルギー、ということだよな。さらに核燃料を燃やしたあとの核廃棄物を再処理すれば、また燃料として利用できる〝永遠のエネルギー〟だと。石油が出ない日本にとって大事な電力源だ、という説明をすんなり受け入れてしまっていたんだ。

テリー 正直、僕らもそう思っていましたからね。

小泉 そしたら、2011年3月の東日本大震災が引き起こした原発事故で、「話が違うじゃないか!」と驚いてしまった。そこから興味を持って原発の本を読み始めたら、知れば知るほど「日本の原発はダメだ」と。

テリー 今まで信じていた安全、低コスト、クリーンというのは‥‥。

小泉 全部ウソ。だからどこに行っても「経産省の説明は全部ウソだ!」と必ず言うようにしている。それでも、今までに経産省から抗議に来た役人は1人もいない。私の言っていることが正しいから、抗議できないんだな。

テリー どこに行っても、というのは、講演活動などでしょうか。

小泉 うん。2009年に政界を引退してから、講演をする機会が増えて、それまでは「思うようにいかないのが人生」というテーマで話していたんだけれど、「過ちて改めざる、これを過ちという」「過ちては改むるにはばかることなかれ」という言葉を思い出した。安全神話を真に受けて推進してきた総理時代の反省を込めて、震災後からテーマは原発1本だね。

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