健康宅配チェックシート〈大人のADHD〉バカボンのパパが該当、投薬治療も要検討

 生まれてこの方、学校や職場で周囲となじめたためしがない─。そんな生きづらさや対人トラブルの原因は、大人の発達障害かもしれない。もっとも、「個性」だと、ひとくくりにするべからず。心当たりがあれば、すぐにでも専門医に相談しよう!

 発達障害の中でも、大人になるまで見すごされがちなのがADHDである。生まれながらの脳の機能障害にもかかわらず、日本社会において、「空気が読めない奴」「おっちょこちょいな子」というようなパーソナリティとして認識されているのも一因だろう。

「子供の心が折れる前に親に読んでもらいたい本」(KKロングセラーズ)を著書に持つ「浅川クリニック」の浅川雅晴院長が解説する。

「ギャグ漫画の登場人物や漫才のボケなどで『お笑い』として昇華されがちです。例えば、漫画なら『天才バカボン』のバカボンのパパ、『ドラえもん』ののび太は、軽度あるいは中等症以上のADHDに該当すると思われます。彼らの人となりは、第三者として俯瞰して見るにはユニークで楽しいかもしれません。しかし実生活において、その当事者になると、生きづらさこの上なし! うつ病を発症し、自殺までしてしまう現実まであるのです」

 その症状は大きく3つに大別される。まず、1つ目は「多動症状」だ。

「落ち着きがなく、じっとしていられない状態です。主に中学生までの子供に見られます。状況によって行動を抑制する前頭葉の機能が弱く、衝動的な行動を抑えられないと言われています。授業中や全校集会中に、じっと座っていられずにウロチョロしてしまう。平成半ば頃までは、両親の躾で訓練されていたので、あまり目にしませんでしたが、最近は共働きや核家族化の影響で躾に時間を割けないのか、衝動を抑えられない子が増えているようです。とはいえ、そういった落ち着きのなさは脳の発育過程で改善される傾向があります」

 ところが、大人の場合は“コミュ障”よろしく会話が怪しくなるようで、

「おしゃべりを始めると止まりません。しかも、相手のリアクションなどお構いなしに、次から次に頭に思い浮かんだ話題を展開してしまいます。少しでも多くの情報を相手に伝えるために、早口にもなりがちです。その場がシラケていようが気にしないので、講演会などのスピーカーとしては適任でしょう」

 同様に部屋の片づけができないのも、代表的な症状の1つだ。

「頭の中にやりたい行動がどんどん思いついてしまうのが原因です。例えば部屋の掃除をしているのに、洗濯機を回してみたり、大鍋でカレーを調理したりと、止まりません。その過程で当初の片づけというタスクが頭の中から消えてしまうのです。いずれも中途半端な行程で次に移行してしまうので、洗濯物は干さずに放置され、カレーは煮込みすぎて焦げてしまうでしょう。単なる面倒くさがり屋とは性質が異なるのです」

 怠惰とごっちゃにしてはならないのである。

 2つ目は「衝動性」。こちらも人間関係のトラブルに発展しやすい。

「とにかく、思ったことをすぐに言動に出してしまいます。多かれ少なかれあることだと思いますが、ADHDの場合は空気を一切読みません。例えば、お葬式に出席して遺族に『今日のファッションはモノトーン系ですね』と、トンチンカンなことでも平気で口にしてしまいます。相手のコンプレックスを指摘して傷つけてしまうこともしばしば。いずれも、悪意がありません」

 時として衝動的な欲求にも負けてしまうようで、

「ついつい衝動買いをしてしまいます。新しいもの好きなので、目に映るものがどれも魅力的に見えてしまうのでしょう。普通はみずから財布と相談して『来月の給料が入ったら買おう』みたいに節度を持つものですが、後先考えずに金銭を投じてしまうのです。スマホゲームに生活費まで課金してしまうケースも‥‥。いずれにせよ、貯金ができない人が少なくない」

 3つ目が「不注意」である。プライベートよりも、仕事に影響を及ぼしかねないだけに厄介なのだ。

「ケアレスミスを繰り返してしまいます。1つのことに集中できずに気が散ってしまうのが原因です。先ほど、話題にした片づけができない症状にも影響しています。それに付随して、よくものを失くしてしまいます。爪切り、ハサミ、栓抜きなどたまにしか使わないものがなくなることが頻出する。時間にもルーズで、約束も忘れてしまうのでアポイントを反故にしてしまうことも。いずれも、物を置く定位置を決めたり、予定をビジュアル化したりして対策を講じる必要があります」

 やはり、仕事で失敗することが多いというが、

「仕事を頼まれると断れません。というのも、過去に人間関係を壊してしまった経験から友人が少ない。そのため、人に頼られる経験に乏しいので、うれしさも相まって何でも期待に応えようとしてしまうのです。しかし、もとよりマルチタスクが苦手。複数の案件を抱えたまま“溺れてしまう”のが目に見えています。そのまま精神も病んでしまって‥‥」

 自責の念に駆られるくらいなら、投薬治療を検討するのも1つの手段である。

「ADHDは発達障害の中でも薬物治療が進んでいます。いずれの3つの症状も抑える薬があります、日本では考えられないかもしれませんが、アメリカでは学校の先生が親から薬を預かって子供に飲ませるケースもあります。自らのハンディキャップを認めることに抵抗があるのは理解できます。しかし、生きづらさを抱えたまま生活するのはとてもつらいことだと思います。限界を迎える前に動いてください」

 少しでもみずからの人生をイージーモードにするために!

【「大人のADHD」チェックシート(12)】

思い当たる項目にチェックを!

(多動性)
(1)仕事や勉強中に落ち着かず、ソワソワしてしまう
(2)貧乏ゆすりやペン回しがやめられない
(3)部屋の掃除などの家事中に別のことに気を取られてしまう
(4)おしゃべりを始めると止まらない。気がついたら自分ばかりが話している

(衝動性)
(5)TPOにそぐわない不用意な発言をしがち。思ったことをすぐに言動に出す
(6)衝動買いが多い
(7)つい人を傷つける発言をしてしまう。言いたいことを我慢するとイライラする
(8)ささいなことで怒ってしまう

(不注意)
(9)会議やデスクワークに集中できない
(10)ものをよく失くす。約束を忘れがち
(11)ケアレスミスが多い
(12)仕事の納期に間に合わない。帳尻を合わせてばかりだ

チェックの数
1~3項目 ADHD疑い
4~6項目 ADHD軽度
7~9項目 ADHD中等症
10以上 ADHD重症

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