石原伸晃氏が参院選で自民党に見切りをつけられた3つの理由

「とうとう自民党は石原伸晃に見切りをつけたか。背に腹は代えられぬということか」(自民党長老)

 自民党は今夏の参院選・東京選挙区(改選数6)に、34歳という若さのNPO法人代表理事である新人女性を擁立する方針を固めた。一方、自民党からの出馬を模索していた元幹事長・石原伸晃氏が公認から外れる事態となり、党内外に驚きが広がっている。

 今回の経緯について、政治アナリストはこう語る。

「自民が選んだ候補は、渡部カンコロンゴ清花氏。その結果、2021年の衆院選で落選し、今回の参院選で自民党からのくら替え出馬を狙っていた石原は、自民の公認を得られませんでした」

 石原氏を“蹴った”形となった自民党に、いったい何が起きているのか。先のアナリストは続ける。

「石原氏が外された理由は三つあります。第一に、全国的にいまだ約30万人の会員を擁し、自民党の選挙マシーン的存在である医師会との関係が強い現職・武見敬三氏の当選を優先するためです。武見氏は医師会との太いパイプを持ち、組織票の確保に重要な存在ですからね」

 さらに、自民党は現在、国会のみならず都議会でも裏金問題が取り沙汰されており、参院東京選挙区でも逆風が必至だ。そのうえ、武見氏と石原氏の支持層はともに保守層と重なるため、両者を同時に擁立すれば“共倒れ”の危険がある。

「実際、武見氏は決して選挙に強いとは言えません。19年の参院選では、東京選挙区に武見氏と丸川珠代氏の2人を擁立しましたが、丸川氏が大量得票を獲得した反面、武見氏は辛うじて当選するという大苦戦を強いられました」

 次に、石原氏の「後ろ盾」の変化が挙げられる。

「石原氏といえば、父親は芥川賞作家で元東京都知事の慎太郎氏、そして大スター・石原裕次郎氏の兄という血筋。さらに、渡哲也氏ら『石原軍団』が毎回応援に駆けつけ、大量得票につながっていました。しかし、今やその多くが鬼籍に入り、当時を知る有権者も高齢化の一途をたどっています。もはや“親の七光り”では票が取れない。これも公認見送りの理由でしょう」

 三つ目は、有権者の意識の変化だ。

 昨秋の総選挙で、自民党は裏金問題の逆風を受けて少数与党に転落した。しかしその選挙で注目を集めたのが、東京15区(江東区中心)から出馬した大空幸星氏だった。彼は公募で選ばれた候補で、出馬前から孤独対策に取り組むNPO「あなたのいばしょ」を設立。Z世代の代表格としてメディアにたびたび登場しており、大きな注目を集めた。

「結果的に選挙区では野党候補に敗れましたが、比例で当選しました。自民党としては、大空氏の擁立がある程度成功したとみて、今回の参院選でもNPO出身の若い女性候補を起用したのではないでしょうか。この候補なら従来の自民支持層と重ならず、武見氏の票を食わない。加えて、若年層や女性層へのアプローチも期待できます」(政治部記者)

 とはいえ、不安も残る。前出の政治アナリストはこう指摘する。

「石原氏は自民党公認から外れましたが、出馬を断念するかどうかはまだ不透明です。仮に無所属で立候補した場合、従来の自民党票を大きく奪う可能性があり、武見氏も安泰とは言えません」

 石原氏の今後の動向も含め、東京選挙区は波乱含みの展開となりそうだ。

(田村建光)

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