推し活で大ブーム「アクリルスタンド」のまさかの製作費/山中伊知郎「あなたの知らない“原価”の世界」

【今回のお値段「アクリルスタンド」:生産量千個単位の商品 1個400〜500円(アクリル板1個分60〜70円くらい)】

 アクリルスタンド、いわゆる「アクスタ」は透明なアクリル板にアイドル、アニメやゲームキャラなどの画像を印刷して切り抜き、台座に差してデスクなどに飾るもの。いわゆる「オタク系商品」の代表の1つでもあり、例えば「推し」の声優がいたら、その声優と、演じるアニメキャラの両方のアクスタを並べて楽しむファンも少なくない。そして年々売り上げは伸び続けているとも。業界関係者によれば、

「一説には500億円市場と言われています。しかもアニメ好きの外国人ファンも増えていて、インバウンド需要が今後さらに期待できますからね。中国をはじめ、海外で生産する商品も出回るようになってきて、制作費も安くなってきています」

 では、実際、作るのにどれほどカネがかかるのか?

 もしまとめて千個単位で作るとなると、まずアクリル板に絵柄を印刷して、それをレーザーカッターで切り出す。アクリル板に1個60〜70円かけて、印刷も含めて100円前後で作り、小売りへの卸値200〜250円くらいで、小売値400〜500円とか。これが100円ショップに卸すくらいになると、5万個、10万個といった単位で作られ、もう製造原価は1個20〜30円くらいまでになる。当然、アニメキャラなどには小売値の5〜7%くらいのロイヤリティがつく。

 一方で1個1個、アクリルにインクジェットで印刷して作るケースもあり、こちらは通常1個に600〜700円の原価をかけて1500〜2000円で売ったりとか。「商品」というより、趣味で作る「同人」の作品である場合もけっこう多く、中には手描きのものもけっこうある。

 最近は、このアクスタもどんどん進化中で、例えばアクスタにチップが内蔵されていて、スマホで触れれば、そのキャラクターやアイドルの歌声や動画がすぐにスマホに流れる、なんてサービスも一般化しつつある。おかげで、アクスタ愛好者はオタク系の若者層ばかりでなく、演歌やムード歌謡を好むような中高年層にまで広がっているとも。今やオバちゃんの「追っかけ」にとっても、アクスタは欠かせない「推しグッズ」で、コンサートやリサイタルで売られる定番の1つなのだ。

 さらに、前出・業界関係者によれば、

「アクスタのキャラクターとして期待されているのが艶女優なんですね。スマホを触れるだけで女のコが脱いで、カラむところまで見られる。ファンにとっては、そのコを独占した気分になれます。しかもアプリは必要ないんで、スマホが家族共用でも、会社からの支給でも痕跡が残らない」

 まだまだアクスタの利用法は多様化していき、需要も爆上げしそうな雲行きなのだ。

山中伊知郎(やまなか・いちろう)今、日本各地のヘンな市議や区議を取材する連載をウェブ・マガジン「アサ芸プラス」でやっている。ユニークな市議の演説が聞けるアクスタなんて、地元でならけっこうウケるんじゃないかと、ちょっと思う。

マネー