佐藤優「ニッポン有事!」露現地情報を独自入手! トランプ&プーチン電話会談

 トランプ米大統領が大統領に就任した後、ロシアのプーチン大統領と電話で会談した事実を明らかにした。

〈トランプ米大統領は8日公開の米紙ニューヨーク・ポストのインタビューでロシアのプーチン大統領と電話で協議したと明らかにした。話した時期や回数には触れなかった。早期のプーチン氏との会談に意欲を示し、ウクライナとの戦闘終結へ交渉を急ぐ方針を改めて強調した。

 インタビューは7日に実施した。プーチン氏について「人々が死ぬのを止めたがっている」と説明した。「私はプーチン氏と常に良好な関係を保ってきた」と語り、戦闘を停める具体的な計画があると主張した。

 タス通信によると、ロシアのペスコフ大統領報道官は9日、プーチン氏とトランプ氏の電話協議について「肯定も否定もできない」と述べた。

 ニューヨーク・ポストによるとトランプ氏はインタビューに同席したマイク・ウォルツ大統領補佐官(国家安全保障担当)に向けロシアとウクライナの首脳それぞれとの会談を念頭に「会談(の計画)を進めよう。彼らは会談を望んでいる」と語りかけた。〉(2月10日「日本経済新聞」)

 筆者もこの記事が掲載されるよりも数日前にトランプ・プーチン電話会談に関する情報をロシア筋から得ている。その要旨は以下の通りだ。

〈1.2月1日にプーチン・トランプ電話会談が行われた。

 2.(1)プーチンは、停戦交渉に応じることはできる。

(2)ただし、ゼレンスキー「大統領」と交渉することはできない。去年5月20日に大統領任期が切れているゼレンスキーには大統領としての正統性がないからだ。

(3)ステファンチューク・ウクライナ最高会議(国会)議長ならば、選挙によって国民に選ばれた代表なので交渉が可能だ。

 3.プーチンの発言に対してトランプは「今後もあなたと協議していきたい」と答えた。〉

 現実的に考えた場合、ステファンチューク氏には、ウクライナの軍関係者や政治エリートをまとめる力がない。このような人物と交渉をしても、停戦合意に至らないことをプーチン氏は十分理解した上で、トランプ氏に球を投げたと思う。

 ゼレンスキー氏が大統領として正統性をもっていないというプーチン氏の主張には説得力がある。ゼレンスキー氏が大統領選で当選し、正統性を得るには、数か月の時間がかかる。その間、ロシアは特別軍事作戦を進め、占領地域を増やすことになるであろう。

 ゼレンスキー氏以外の者が大統領に当選した場合、その政治基盤がどの程度強いかは未知数だ。ウクライナの国家意思形成に混乱が生じれば、ロシアにとって有利な状況が生じるとプーチン氏は計算しているのだと思う。

 トランプ氏がゼレンスキー氏に圧力をかけて、大統領選挙を行わせるような事態になれば、今後の停戦交渉の主導権をロシアが握ることになると筆者は見ている。

佐藤優(さとう・まさる)著書に『外務省ハレンチ物語』『私の「情報分析術」超入門』『第3次世界大戦の罠』(山内昌之氏共著)他多数。『ウクライナ「情報」戦争 ロシア発のシグナルはなぜ見落とされるのか』が絶賛発売中。

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