昨年7月末、すったもんだあった末に「カジノ法案」が成立してから約半年。2月1日には政府がカジノを含む施設(統合型リゾート施設でIR施設という)設置の実施法施行令をまとめ、カジノ施設のおおよその概要が明らかとなった。日本版カジノ構想が持ち上がって以来、誘致に事業参入にと、水面下で様々な動きが交錯してきたが、果たして現場はどのようなことになっているのか。
昨年末、ある業界団体主催のプレゼンテーションの場に参加した、市場調査会社社員はこう言う。
「そこではIR施設を誘致したい自治体、それと事業に参加したいゼネコン、金融機関、ファンド、カジノ運営会社などが一堂に集い、各者がそれぞれのプランをプレゼンして熱を帯びていました」
ところで、カジノを含むIR施設とは、国際会議場やホテル、ショッピングモール、劇場・映画館、様々なアミューズメント施設、そして肝となるカジノの複合観光集客施設のことで、これを一体型で開発するものだ。そしてそこでは、カジノの収益が施設全体の収益の柱ともなりうるので、カジノ運営で独自のノウハウを持つ会社が中心となり、主導する必要がある。つまり、ラスベガスや香港、マカオといったすでにカジノを併設するIR施設の運営で独自のノウハウを持つ、世界で何社かある「カジノ・メジャー」会社がいずれにせよこれを先導する形となる。日本版カジノも必然的にこういう形をとることになる。だから一方では、日本版カジノに対しては「(そういった)カジノ・メジャー会社に利するだけで、日本の個人資産がカジノでの賭博行為を通じて海外に流出するだけ。ハゲタカ外資を喜ばせるだけだ」という批判的意見がある。
■売上の大半は「日本人が落とす金」との試算
だが、すくなくとも日本版カジノの設立にあたっては、「外国人旅行者によるインバウンド・ブームを加速し、日本国内にお金を落としてもらうものだ」という説明がよくされるのだが、前出の市場調査会社社員によれば、こういった国内向けのPRをそのまま受け止めるのは危険と言う。
「業界団体への加盟各社や取材するマスコミの意見を総合的に判断すると、どうも結局は日本人の個人資産を狙っているようなんです。例えば、ある外資系金融機関の内部資料を見せてもらったんですが、例えばあるカジノ施設のシミュレーションで100億円の売り上げがあったとして、そのうち60~70億円という大半が、日本人が落とすお金という試算になっている。『あれ?よく言われているような、少し前まで爆買いしていた中国人や中東の石油王などが落とすお金はほとんど想定されていないんだ』と、ビックリしました」
ちなみにIRの候補地については、以下の候補地が想定されている。
「2025年に万博が開催される大阪は、跡地の利用もあってほぼ決定でしょう。あとは苫小牧、横浜が先行している印象ですね。プレゼンの場でも、これらの都市でシミュレーション図が使われていましたから」
結果は果たして…。
(猫間滋)