香港株暴落の次は不動産…そして「香港ドル」が習近平を追い詰める

 習近平国家主席の「一人独裁」政権がスタートしたが、同時に外国人投資家が“中国離れ”を起こし、香港の金融市場が大いに揺れている。

 習近平が3選を果たした10月24日、海外投資家は経済統制が強まるとの懸念から、香港、深セン、上海の株式市場で過去最大の売り越しをした。

 香港市場はほぼ全面安となり、前週末比で13年ぶりに6%安をつけ世界を驚かせた。まさに「習近平暴落」の様相だが、問題は株式の下落がその後も止まらず、影響が不動産投資にも及びはじめていることである。

 海外投資家が香港市場を見限れば、その弊害はいずれ不動産に及ぶ。株の下落から半年、遅くとも1年以内に不動産に波及するのが、これまでの歴史の事実だ。

 この時、銀行の不動産担保は価値を失い、金融危機が発生する。香港の金融機関は多額の不良債権を抱えることになり、その重さに耐えかねて破綻に追いこまれる。

 その結果、どうなるか。この時点で救済できなければ、香港の基軸通貨である香港ドルが紙屑になるかもしれないのだ。

「香港ドル」は中国本土の「元」とは異なり、中央銀行(中国人民銀行)が発行するものではない。つまり国による後ろ盾がない。香港ドルは世界で唯一、発行主体が民間銀行で構成されている。

 ちなみにその3行は、英国に本拠がある香港上海銀行、同じく英国籍のスタンダード・チャータード銀行、中国籍の中国銀行で、外国為替基金への米ドル預託と引き換えに債務証書を交付してもらい、債務証書相当額の香港ドル紙幣を発券している。

 だが、もし香港ドルが暴落しても、英国が救いの手を差し伸べることはないだろう。中国も、本土の金融機関が地方債と不動産融資が不良債権化している中で、香港ドルを救済するのは難しいところだ。

 したがって、香港市場がダメになれば香港ドルが紙屑になる可能性が高いのである。

 もともと、香港の金融界は中国経済を支えてきた。少なくとも2010年代までは、香港の金融界が中国に多額の資金を提供し、中国経済発展の原動力になった。

 しかし、香港が民主化を求めて習近平政権と対立するようになると、中国政府は民主化運動の抑え込みに入り、経済活動をも減速させた。これを反映して、2018年2月をピークに香港株は下落基調が続き、ハンセン指数は一時半値を割っている。

 このままいけば、香港ドルばかりか中国「元」にも深刻な打撃を与えるだろう。習近平3期目の正念場が早くも訪れようとしている。

(団勇人・ジャーナリスト)

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