まるで韓国ドラマ…尹大統領「非常戒厳」宣布に溺愛妻を守る自滅説

 12月3日の深夜に勃発した韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領による突如の非常戒厳の宣布と解除表明というドタバタ劇の余波が続いている。

 非常戒厳令宣布の理由を、北朝鮮の脅威や「反国家勢力」から韓国を守り、自由な憲法秩序を守るためだと説明した尹氏。韓国では過去にも何度か出されているが、1961年の軍事クーデターしかり、64年の日韓国交正常化交渉に反対する大規模デモの際は、実際にのっぴきならぬ緊急事態にあった。

 しかし、北朝鮮との緊張関係は続くものの、明日に差し迫ったような脅威は見られない。なぜそんな状況下で尹氏は宣布を行ったのか。その背景には、尹氏本人が政治的に追い詰められたことがあったとの見方が大半だ。

「尹氏は2022年の大統領選挙で勝利。同年5月に大統領に就任したものの、今年4月の総選挙では野党に大敗したことで政府として国会で法案を通すことができず、いまや完全に死に体状態となっている。加えて今年に入り、ファーストレディーである金建希(キム・ゴンヒ)夫人をめぐる数々のスキャンダルが発覚。支持率が20%を切ったことで、任期5年の折り返しとなる11月7日の記者会見ではテレビの全国放送で謝罪するに至った。それでも支持率低下に歯止めがかからず、もはやなす術がない状況だったとみられています」(韓国情勢に詳しい外報部記者)

 そして3日深夜、韓国中が唖然呆然となるドタバタ劇は起こった。

「尹氏が夫人と結婚したのは、すでに50歳を過ぎていた2012年。検察官出身でゴリゴリの堅物として知られる尹氏に対し、莫大な資産を有する実業家、投資家である夫人は、その脇の甘さから『スキャンダルのデパート』と揶揄されてきた人物。つまり野党にとって夫人は尹氏を攻撃する格好の材料で、尹氏にとってはウィークポインドだった。とはいえ尹氏は、ひと回り年下の夫人を溺愛。なんでも結婚当初、貯えなどほとんどなかった尹氏を夫人が運用していた株で『食わせていた』とのことで、尹氏にとって夫人は最愛の人であると同時に恩人という思いが強い。そのため、今回の非常戒厳令宣布の背景には、これ以上スキャンダルまみれの夫人を晒しものにしたくないとの思いがあったのではないか、との指摘も飛び交っています」(同)

 というのも、戒厳宣布を受け、戒厳司令官の陸軍大将名で「布告令」が発令されれば、国会や地方議会、集会、デモなど一切の政治活動が禁止されるだけでなく、すべてのメディアが統制を受け、違反者に対しては令状なしで逮捕や拘禁、捜索ができることになる。もちろん、そんな韓国ドラマ並みの見方が事実かどうかは分からないが、いずれにせよ今回の大騒動により尹氏がさらに崖っぷちに立たされたことだけは事実だ。

「今後は自身の進退も含め、夫人に関しても収容・収監、あるいは離婚といった選択肢を迫られることになるでしょうが、はたして尹氏がどの道を選ぶのか。一部メディアでは『妻への愛に殉じるのでは』といった報道もあるようですが、一方でまたも野党に格好の批判材料提供したことになる。むろん、北朝鮮の金正恩氏も、それみたことか、とほくそ笑んでいることは間違いないでしょうね」(同)

 果たして、どんな結末が待っているのか。

(灯倫太郎)

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