相次ぐ値上げに政情不安…「パリ五輪」ニッポン応援団を待ち受ける大逆風

 7月27日(日本時間)のパリ五輪開幕まで1カ月と少し。いやが上にも盛り上がるお祭りムードとは別の意味で、開幕が迫ったが故に様々な問題や反発が同時に沸き起こっている。

「エッフェル塔は大会直前のこの時期の6月17日に2割値上がりになりましたが、このようにパリでは有名な観光資源の入場料が相次いで値上がりしています。既に今年の1月にベルサイユ宮殿で値上げが行われ、ルーブル美術館に至っては、約2700円の料金が約3500円と3割も引き上げられたほどです。理由は光熱費の高騰などでこれは致し方ありませんが、コロナ禍で落ち込んだ観光収入を取り戻したいというのも本音としてあります。エッフェル塔では、17年から30年までに大改修が行われていて財政的に厳しいところで、五輪の便乗値上げという声も聞かれます」(旅行ライター)

 この他、観光資源だけでなく地下鉄も7月から9月は2倍となるので、評判が悪くなっている。ドル円は歴史的円安だが、対ユーロも事情は一緒で、1年前は1ユーロ約150円だったところが、現在は170円弱。特に日本人の応援ツアー客にとって、懐はだいぶ厳しい。

 競技会場のほとんどを既存の施設で賄い、半径10キロ以内との「コンパクトな大会」を標榜し、開幕式をセーヌ川で行うことで耳目を引いた今大会。セーヌ川は他に、トライアスロンやマラソンスイミングでも使われるが、そのために水質汚染の問題が懸念されていた。この件はどうなったか。

「1900年のパリ五輪では、セーヌ川で遊泳できました。その再現という事で、パリ市は水質改善に努めてきました。女性市長のアンヌ・イダルゴ氏は、自分も泳ぐから安全だと宣言していました。そして6月に入って行われた最新の水質調査では、改善が見られてゴーサインが出ました。ただし、自然の川ですから、天候次第でどうなるか分かりません。そこで『プランB』なるものを公表したのですが、場合によって競技を延期するかもしれないが、会場は変えないと、あくまでセーヌ川の使用にこだわっています」(同)

 また、懸念されるのがテロの危機だ。6月1日には、チェチェン出身の18歳男性がテロを計画していたとの容疑で逮捕され、パリ当局は目を光らせているとアピール。さらにはAIを使った監視システムの強化に余念がないという。

「サッカーのパリ・サンジェルマンの試合やテイラー・スウィフトのコンサート会場といった、大観衆が集まるイベントで顔認証を含む監視システムの実験を繰り返してきました。しかしいくらテロ防止とはいえ、過度な監視は当然、パリっ子の反発を買っています」(全国紙記者)

 また、政情不安も指摘される。

「フランスで6月9日に行われた欧州議会選挙で、マクロン大統領率いる与党連合が、ルペン氏率いる右派政党に大敗北を喫したからです。それにより将来的なEU離脱説まで囁かれるほどで、フランス国債は暴落しています。敗北を受け、マクロン大統領は下院を解散し、6月30日と7月7日に総選挙が行われることとなっており、フランスは騒然としていて、その結果次第では暴動すら起きかねません」(同)

 テロの脅威は、外側だけでなくフランス国内にもくすぶる可能性もあるということか。様々な混乱を受け、パリ市民の間では「(五輪に)来るな」、「(来たら)生き地獄になる」などとの動画を発信、TikTokで広く拡散しているといい、余裕のある人は大会期間中はパリ脱出を計画しているとか。ともすれば、ニッポン応援団には相当な逆風が吹き荒れそうだ。

(猫間滋)

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