以前からJR東日本では「あずさ」や「ひたち」、「踊り子」など多くの特急列車で採用されている全席指定席。3月のダイヤ改正からは房総半島と都心を結ぶ「しおさい」と「わかしお」、「さざなみ」で自由席が廃止されたが、JR北海道でも複数の特急列車を全席指定席化している。だが、評判は思わしくなく、特急の利用者は急減しているのだ。
この春から全席指定席となったのは「北斗」(札幌ー函館)、「すずらん」(札幌ー室蘭)、「おおぞら」(札幌ー釧路)、「とかち」(札幌ー帯広)の4本。さらに「カムイ」「ライラック」(ともに札幌ー旭川)は全席指定こそ免れたが自由席が3~4両から2両に減った。
しかも、変更に合わせて当日でも購入可能だった駅窓口での往復割引切符の販売を廃止。その結果、JRを避ける人が続出し、高速バスに利用客が流れることとなった。
「JR側は公式サイト『えきねっと』からの購入に誘導したいため往復割引の廃止に踏み切ったようですが、高齢者にとってネット購入はハードルが高い。しかも、当日だとネットでも割引が利かないため、バスの利用を推奨する企業も増えています」(地元紙記者)
実際、某上場企業の札幌支社に勤めるMさん(40代)も直前に出張が決まることが多く、4月からは「道内の近場の出張はなるべく高速バスを使うように」との通達があったとか。
「3月下旬、旭川から札幌に特急で戻る際に指定席を利用したのですがガラガラでした。その反動なのか高速バスは激混みで、4月中旬に札幌ー室蘭のバスを利用した時は平日でも満席に近くて驚きました」(Mさん)
自由席が廃止、削減された道内の各特急の指定席は、列車によっては“空気輸送”と揶揄されるほどスカスカのケースも。なぜこのような事態になってしまったのだろうか?
「例えば、札幌から室蘭や旭川に行く場合、特急指定席の正規料金は片道5220円ですが高速バスは2500円。つまり、当日購入でもこれだけ違いがあるわけです。ネット購入に移行させたいJR北海道の思惑は理解できますが、あまりに早急過ぎる。大幅な割引を実施するなどバスに流れた利用者を呼び戻さなければ取り返しのつかないことになりそうです」(同)
利用者だけでなく一部メディアからも“改悪”と批判される今回の指定席拡大策。経営立て直しを図るJR北海道にとって逆効果にならなければいいが…。
※画像はガラガラの特急カムイの指定席(Mさん提供)