3月に195社の主要食品メーカーが728品目の値上げをした。さらに4月は、3000品目上の値上げが控えているという。3月の値上げは冷凍食品などの加工食品が中心で400品目以上。また、原材料の砂糖とカカオ豆などが値上がりしたため菓子類も値上げした。
昨年は異常気象でトマトやオレンジなどもデキが悪く、それを元にした食品類が値上げされた。家畜向けのエサの値上げもあり、畜産品の値上げも続く。値上げしていないのは、給料だけだ。
食品は原材料が上がれば値上げされるし、畜産物も家畜のエサが高くなると、値上げされるが、人間さまに不可欠な食品や生きていくのに必要な光熱費や衣料品ばかりが値上げされてもほとんど給料は上がっていかない。困ったものだ。
日本の物価は、今や年平均で3%くらい上がっている。100円だったものが1年後には103円というわけだ。しかし、食品は季節性の高い生鮮食料品を除いても9%近くも上がってる。家具や家電、衣料品などは古いものを我慢して使い続ければ新たな出費にならず、節約する方法はある。だが、光熱費や食料品はそういうわけにはいかない。
多くの人が1円でも安いものを買うべく必死になっているけれど、値上げの波は庶民に手頃な価格の商品ばかりに襲いかかり、第3のビールの酒税も値上げされた。プレミアムビールは増税ならまだしも、庶民的なビールには手をつけないでもらいたいと思うのだが、政治はそうはしてくれない。
昔、日本酒は特級、一級、二級で酒税の税率が大きく異なっていた。政治に優しさがあったものだ。だが今は、スーパーでの閉店間際の惣菜や弁当の割引率も低くなり、その割引された消費期限ギリギリの惣菜を買う人がどんどん増えていると、飲み屋で会ったオヤジがこぼしていた。
私が気になっているのは、価格自体は変えず内容量を減らすステルス値上げだ。価格も上がっているのだが、それ以上に商品自体が貧弱になっている。
例えば、昔から食べている有名ブランドのヨーグルトは、かつては500グラムでグラニュー糖の砂糖がついていた。それがまず砂糖の量が半分になり、次に内容量が450グラムになって、砂糖が消え、とうとう中身が400グラムになった。さらに価格もジワリと上がった。
牛乳やオレンジジュースなどパック入り飲料も、昔は1リットルが当たり前だったが、最近は900ミリリットルと1割減った。パック入りの納豆は、ほとんど同じ大きさの白いパックで3つ束になって売られている。かつては、ほぼすべての商品に1パック50グラムの納豆が入っていたが、最近は50グラムのものは一部だけ。商品によっては45グラム、40グラム、中には35グラムしか入ってないものもある。35グラムのものは、50グラム用の容器をそのまま使っているからか、フタを開けると中身がスカスカだ。
冷凍食品のハンバーグは小さくなって。今までは6つ入りだったのに、5つ入りになったものもある。ポテトチップスなどの袋菓子も内容量が減った。
メーカー側もきっと大変で、値上げを受け入れてもらうために苦渋の決断をしているのだろうが、消費者側は商品を選ぶ時にイチイチ内容量を比較しなくちゃいけなくなり‥‥、いや、アサ芸のこのページでは、はっきり言わせてもらおう。セコい!
こんなことは日本だけだろうと思っていたら、アメリカでも行われているようで、有名な定番のチョコレートクッキーの大きさが小さくなったという。それを子供向け番組のセサミストリートの人気キャラクター、クッキーモンスターが文句を言っているとニュース番組で扱っていた。世界中、どこもかしこも庶民は追い込まれているのだ。
佐藤治彦(さとう・はるひこ)経済評論家。テレビやラジオでコメンテーターとしても活躍中。新刊「つみたてよりも個別株! 新NISA この10銘柄を買いなさい!」(扶桑社)が発売中。