農水省は9月13日、埼玉・秩父市にある養豚場で豚コレラを確認したと発表。関東地方で豚コレラの発生が確認されたのは初めて。約680頭を殺処分するという。
9月9日に岐阜県で26年ぶりに豚コレラが発生してほぼちょうど1年、日本国内では未だに感染の拡大を防げないでいる。
「岐阜の後、愛知県、長野県、滋賀県、大阪府、三重県、福井県で発生が確認されており、今回の埼玉で8府県目。豚コレラはブタやイノシシの病気で人に感染することはなく、仮に豚コレラにかかった肉を食べても人体に影響はありませんが、伝染力が高く、ひどい場合には死んでしまうため、結局は殺処分するしかなく、現在まで約13万3000頭が処分されています」(全国紙記者)
伝染を防ぐには、「持ち込まない・広げない」ことが必要だが、いくら農場内で衛生対策を図っても、環境中のウイルス濃度が高いため、人や車、野生生物からの持ち込みは防ぎようがなく、特にイノシシが走り回って被害を拡大しているのだという。そのため、ワクチンの接種を望む声が出ているが、一度、接種を実施すると国際機関から認定される「清浄国」への復帰に時間がかかってしまうため、農水省は二の足を踏んでいる。
こんな厄介な豚コレラの日本への侵入は中国から来た可能性が高いとされているが、“本場”中国ではさらにひどい状況にあるという。
「より感染力が高く致死率も高くて悪質なアフリカ豚コレラが蔓延して国をあげての問題となっています。有効なワクチンや治療法がないので、これまでに中国国内の3分の1の頭数が処分されています」(同前)
中国は世界の豚肉流通の半分を占める。従って、中国の養豚業が揺らげば世界中の豚肉供給に支障をきたすことになるのだ。中国の国家統計局が発表した7月の消費者物価指数は前年同月比で2.8%の上昇だったが、食品価格に限っては9.1%の上昇で、豚肉はなんと27%も上昇している。
「地域によっては購入する際に身分証明書を提出して決まった量しか購入できない配給制になっているので、現地では『毛沢東の時代以来だ』なんて声が上がっています。さらに深刻なのは、主なエサである大豆の輸入が米中貿易戦争で大幅に減少していることです」(同前)
豚肉は中国の国民食なだけに、国際政治をも動かすかもしれない。
(猫間滋)