日経平均」爆上げのウラに中国で過熱する「日本株人気」

 年明けから日本の株価が上昇を続け、バブル破綻後の最高値を連日のように塗り替えている。

 岸田政権が「貯蓄から投資」のスローガンのもとに進めた新たな少額投資非課税制度(新NISA)の影響もあるが、最大の理由は外国人投資家の積極的な「日本株買い」である。

 昨年、世界的な投資家であるウォーレン・バフェットが日本株時代の到来を唱え株を買い増し、それが商社など有力企業の株価を押し上げる流れにもなったが、もう一つ見逃せないのが中国で日本株人気が「熱狂」と言っていいほど盛り上がっていることだ。

 中国は資本規制が厳しく、個人は自由に外国の資産に投資することが難しい。そこで日本株投資の数少ない選択肢として注目が集まったのが日経平均連動型の上場投資信託(ETF)だ。

 1月17日の午前、上海証券市場は日経ETFの売買を一時停止した。上海市場に上場する中国株の下げが続いたため、投資家がETFの取引に集中したからだ。そのため、価格が基準価格を大幅に上回り、明らかに相場が過熱したと判断したのだ。しかし、その後も投資家の日本株への熱は冷めず、売買停止が繰り返されている。

 中国で日本株人気が過熱した理由は言うまでもない。中国経済の前途に中国人が悲観し、失望し、諦めているからである。

 中国経済のエンジンであった不動産セクターは恒大集団が債務不払いに陥ってから、間もなく3年を迎えるにもかかわらず、潰すことも再建することもできず塩漬け状態のままだ。若者の失業率は5割に迫り、社会不満が膨らむばかり。消費は低迷し、生活苦で自死する人が後を絶たない。

 先に発表された中国の公式統計では、昨年の実質国内総生産(GDP)は5.2%と発表されたが、国際社会は懐疑的だ。

 改革解放以来30年以上も成長の続いた中国では、資産は「今日より、明日は増えるもの」という考えが国民に染みついている。それだけに、不動産バブル破綻で資産が目減りする恐怖は、我々には想像できないほど途轍もないものだ。

 中国政府はキャピタル・フライト(資本逃避)を抑えることに必死だが、情報を持つ共産党の特権階級である富裕層は知恵を絞り、人脈を駆使して資産の行き先を考える。

 その一つが、日本の億ション買いであり、日経平均株価連動型の上場投資信託(ETF)買いによる日本の株価の押し上げなのである。

(団勇人・ジャーナリスト)

マネー