ABEMAの正月特番に呼ばれて出演してきた。制作しているのはテレビ朝日のスタッフだし、MCもテレビ朝日のアナウンサー、田中萌さんという人気も実力もある美人アナなので、とても楽しい現場だった。
「今年どうやって儲けるか」がテーマの番組。今でもユーチューブなどで見ることができると思うので、興味のある人は検索して見てほしい。
1時間の正月特番として成立させるため、専門家ばかりではおもしろくないからだろう。お笑い芸人・サバンナの八木真澄さんも出演していた。芸人という立場で出ていたが、ファイナンシャルプランナー2級を持ってるそうで、軽妙な語り口で経済を語っていた。
今年、資産をしっかり増やしたいと思う人は、NISAを上手に活用することはとても大切だ。1月から始まった新NISAだけでなく、投資初心者の多くの人たちが昨年末の本誌12月28日号でも特集されていた2つの投資信託を選んでる。三菱UFJアセットマネジメント社の俗称「全米株式」と「全世界株式(オルカン)」だ。
前者はアメリカの代表的な500社の株式の指数であるS&P500に連動する。後者は約9割が先進国(うちアメリカが約6割)、約1割が新興国の株式に投資するもので、これもアメリカの投資機関が出している指数に連動する。過去5年間で前者は毎年18%のリターン、後者も15%近いリターンがあった。
そりゃそうだ。株式市場はコロナ禍で短い間だけ落ちたものの、世界経済が最悪な時にも、各国政府の金融緩和で流れ込んだマネーが株式市場に向かい、株価だけは上がった。
さらに為替は150円台もあった異様なドル高円安。つまり、株価の上昇と円安効果で、この投資信託に一定の期間以上投資し続けてきた人は、ほぼ全員が利益をあげた。何も考えず定期的に一定額を積み立てておけば、銀行や郵便局の金利はほぼゼロの時代に、毎年15%とか18%も増えるとなれば、人々が殺到するのは当たり前。それもNISAの枠での投資であれば、儲けに対して20%以上かかる税金もゼロだ。
今年からつみたてNISAは毎年120万円も投資できるようになった。毎月コツコツ積み立てをする。これは堅実かつ手堅い手法のように聞こえる。しかし、積み立てしている先は株式と円安も円高もある外貨建て。どうして、たまたま運がよかっただけと気がつかないのだろう。
大体、何も考えずに毎月コツコツ一定額を積み立てていれば儲かる─。そんな甘い話がこの世にあるのだろうか?
番組の中でサバンナの八木さんは「自分が現金化したい時に株価が暴落していたら、いくら長期で安心だといっても損をするはずだ」と言った。つみたてNISAで長年積み立ててきたものも全部一緒くたに、下がる時にはドカーンと下がるのだ。
数年にわたって大きく暴落したままの可能性もあるのが投資。この暴落時にお金が必要になったら10年、20年と積み立ててきたものも元本割れしていることも十分考えられる。
新NISAは、売却したらNISA枠が翌年復活することが一つの魅力となっている。だから、なおさら長年積み立てて利益が出ているとしたら、少なくともその一部だけでもしっかり売って利益を確定し、儲けをきちんと取り込むことをしてもらいたい。
リーマン・ショック級の暴落で、株価が2割も3割も下がることが明白なタイミングでは、ちゃんと高いところで売って、下がりきったあとに、また安値から始める。それくらいの工夫もしてもらいたい。
何も毎日、日経新聞や経済ニュースを見てくれとは言わない。世の中のマネーの流れをちょっと気にかけてもらいたい。それがお金に困らない毎日を作る土台だと思うのです。
佐藤治彦(さとう・はるひこ)経済評論家。テレビやラジオでコメンテーターとしても活躍中。著書「素人はボロ儲けを狙うのはおやめなさい 安心・安全・確実な投資の教科書」(扶桑社)ほか多数。