国税庁が発表、「企業案件」でボロ儲け「高所得インフルエンサー」巨額申告漏れのとんでもない実態

 過去の税金滞納と差し押さえなどが問題となり、自民党の神田憲次財務副大臣が更迭されたのは今月13日のこと。これで、9月の岸田内閣改造後の政務三役の辞任は3人目。支持率低下に歯止めがかからないのは当然のことだが、ともあれ今年も残すところあと1カ月。給与所得者は保険料控除申告書を提出するシーズンとなった。

 そんな中、国税庁が22日、今年6月までの1年間(令和4事務年度)に実施した個人の所得税の税務調査結果を発表。そこで明らかになったのが、ネットで稼ぎまくる高額所得インフルエンサーたちによる無申告等の、呆れた巨額申告漏れの実態だったのである。

 経済ジャーナリストが解説する。

「国税庁によると、所得税の無申告者に対する調査が5229件、申告漏れ総額はなんと1418億円にも上り、追徴税額総額も前年度比17.9%増で過去最高を記録したとのこと。こうした背景には近年のネットを利用した電子商取引や、暗号資産取引等で得た利益を申告しないケースが増えていること。なかでも目立つのが、インフルエンサーたちによる無申告です。彼らはSNSで1万人以上のフォロワーを持ち、なかには1件の投稿で100万円以上稼ぐ人もいる。最近では化粧品や食品の広告に限らず不動産や金融商品と多種多様になっていて、年間数千万から数億円稼ぐ人が増えている一方、一部では悪質な所得隠しや無申告が進んでいるのです」

 今年3月には、東京国税局の税務調査を受けたインフルエンサーの女性ら9人に、過去6年間で計約3億円の申告漏れがあったと報じられ、大きな話題になった。

「9人はいずれもインスタグラムやユーチーブなどに数千~数十万人のフォロワーを持つ、首都圏在住の30代女性。日常の写真などを投稿し、同世代の人気を集める一方、SNSで商品やサービスを紹介して高額報酬を得ていました、彼女たちは広告主とインフルエンサーをつなぐ代理店に登録し、広告主から宣伝業務を受注。こうした広告目的の投稿は『企業案件』と呼ばれフォロワー数により報酬が左右するため、フォロワーが増えれば当然売上も上がるわけです。ところが女性たちのなかには意図的に一部を申告しなかった者もいて、結果、全員に追徴税額が科せられ、その総額は8500万円。中には数千万円も稼ぎながら『申告って毎年必要なんですか?』と真顔で訊ねる女性もいたそうで、国税関係者も税金に対する意識の低さに開いた口が塞がらなかったといいます」(同)

 さらに、ここ数年はスマホアプリで知り合った男性らと飲食する、いわゆる「ギャラ飲み」で得た報酬を申告しないケースも後を絶たず、こちらは「てっきり報酬から税金が天引きされていると思っていた」と話す女性もいるというから、驚くばかり。

 そうした実情を踏まえ、今年度の税制改正では抑止効果を高めるため、無申告への制裁である加算税を見直し、納税額300万円を超える部分への加算割合が20%から30%に引き上げられるという。とはいえ、財務副大臣自らが税金滞納や差し押さえを受けるなど「納税義務」を軽視していた岸田政権である。物言えば唇寒しとはこのことか。

(灯倫太郎)

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