物価上昇が止まる気配はない。庶民の懐を直撃する生鮮食品はもちろん、それを除いた食料も前年同月比で9.2%もの上昇というありさまだ(総務省発表・5月消費者物価指数)。この恐ろしい物価上昇は今後どうなるのか。以下、経済評論家の荻原博子氏が予測する。
岸田内閣は、30年ぶりの高水準賃上げを実現した!と実績を誇る。しかしながら、庶民には賃金が上がった、生活が楽になったという実感は乏しい。荻原氏がそのカラクリを明かす。
「まず賃上げと言いますが、平均してみますと物価の方が上がっているわけです。つまり、実質的に賃金は下がっている。年金も同様。確かに、人手不足は顕在化しているので、その意味(雇用確保)での賃上げというのはあります。しかしそのターゲットとなってくるのは20代や30代で、彼らは現在、引く手あまたです」
確かに晩婚化・少子化が進み、20〜30代は独身や既婚者でも子供がいないケースも多い。言ってみれば、お金に少々、余裕がある生活スタイルだ。
「それに若い世代は比較的賃金が低いので賃上げもしやすいですからね。でも40〜50代など、住宅ローンや子供の学費など、最もお金がかかる世代は上がっていない。ややもすると役職定年など逆に下がっている。お金の必要な世代が物価上昇に泣いているわけですが、2024年問題(時間外労働の上限規制)を抱えている運送業にしても、値段が下がることはまず考えられない。また、三菱UFJ銀行などは10月から窓口での振り込み手数料が990円になる。このような傾向を見るかぎり、下半期に物価が下がるということは考えづらいですね。よくて横ばいでしょう」
中高年世代にとっては、なんとも厳しい話だが、何か有効な対策はないのか?
「シンプルな話ですが、専業主婦(主夫)の家庭には奥さん(夫)にも働いてもらう。仕事を選ばず月5万円でもいい。そうすることで家計はかなり楽になりますから。あと、学生の場合はともかく、親と同居している成人の子供には、少しでも家にお金を入れさせることです」
要は家族一丸となって、さらなる物価上昇に立ち向かうしかないのだ。
というのも、実は食料品などの値上がりに、一拍遅れて上がってくるのが「サービス業」だという。
「例えば美容院(理容室)ですね。今までは5000円でカットしてくれていたのに、美容院側も力が尽きちゃって、値上げをせざるをえなくなるでしょう」
すでにラーメン店や街のお弁当屋さんでも1〜2割アップは当たり前。中には「お寺のお布施で2倍要求された」と笑えないケースもあるようだが、水道光熱費やカラーやシャンプーなど、材料費のかかる美容院だけに、2割増ぐらいは覚悟しておかねばなるまい。
「いずれにしても、下半期も物価高は続くでしょうから、夫婦の方であればダブルインカム(共働き)でギスギスしがちな家庭内を少しでも穏やかに仲よく過ごすこと。そのためには、まず健康であることも大切ですね」
庶民にできるのは人間力だけ、ということか。