冬季五輪を諦めていなかった札幌市、「2034年招致」に方針転換か

 東京五輪・パラリンピックをめぐる汚職・談合事件の影響で、2030年の冬季五輪の開催候補地だった北海道・札幌市は招致活動を休止したままだ。

 統一地方選で再選を果たした札幌市の秋元克広市長は「今の状況のままでは招致活動を進められない」と語っており、これを事実上の撤退宣言と捉える海外メディアも多い。

「30年冬季五輪の招致レースは、後から名乗りを上げたスウェーデンとスイスの争いになる見通しです。札幌市の撤退はまだ正式に発表されたわけではありませんが時間の問題でしょう」(スポーツジャーナリスト)

 ところが、その一方で秋元市長は「34年招致」の可能性を示唆したのだ。記者からの質問に対し、「(34年招致は)状況を見極めながらいろいろな関係者と話していく必要がある」とコメントしたのである。この含みを持たせた発言により、新聞各紙は「34年冬季五輪招致に方針転換」と一斉に報じている。

 とはいえ、34年に目標を切り替えても招致は厳しいとの声もある。

「34年の大本命はソルトレイクシティ(米国)です。また、戦争次第ですがウクライナのリヴィウが参入すれば、一転して有力候補になるでしょう。実は、30年冬季五輪にも立候補を検討しており、名乗りを上げれば、世界中の世論が開催を後押しする可能性が高いからです」(前出・ジャーナリスト)

 札幌市はこれらの都市との招致レースに勝たなければならないが、肝心の札幌市民は必ずしも冬季五輪の開催を熱望しているわけではない。朝日新聞が3月に行った世論調査によると、30年冬季五輪については、開催に賛成が38%に対し、反対は47%だったのだ。

「札幌市は3000億円以上といわれる開催費用のうち、老朽化した施設等の建て替え、改修にかかる450億円を市でまかなうとしていますが、それ以上は税金を投入しないことを明言しています。450億円については老朽化にともなう費用で五輪開催の有無にかかわらず発生するものですが、ただ、多くの札幌市民は五輪開催を快く思っていないのも事実ですから、今のままでは34年どころか38年の開催も難しいでしょう」(前出・ジャーナリスト)

 強力なライバル候補地に加えて市民の賛同を得られない招致運動。方針転換しても、やはり成功する可能性は低いと言わざるを得ないのである。

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