NHKのBSプレミアムとBS4Kで再放送中の2013年上半期朝ドラ「あまちゃん」が大人気だ。5月16日の第38回では、主人公・天野アキ(能年玲奈)の母・春子(小泉今日子)から、若かりし頃のアイドルへの憧れが語られる名シーンが流された。
友人・足立ユイ(橋本愛)の口から、春子がかつてアイドルのオーディションを受けていた事実を知らされ、アキは当時の写真を探そうと春子がかつて使っていた部屋を捜索する。そんなアキに春子はオーディション用に撮影した宣材写真を見せる。そこには見事な聖子ちゃんカットで満面の笑顔を作る若かりし頃の春子(有村架純)の姿が。アキから「めんこい」と言われた春子は、アイドルに夢中になっていた「あの頃」を語り出すのだ。
「春子はまず、当時のアイドルがグループアイドル全盛の現在(2008年)とは違ってソロであること、今のようにアーティスト、女優、モデル、グラビアと細分化されておらず、それらのすべてをアイドルがやっていたことを語りました」(テレビ誌ライター)
ここから春子のアイドル論が始まる。山口百恵から始まり、キャンディーズ、ピンク・レディーそして松田聖子へ。スナックの仕事を休みにして、春子の熱弁は続いた。
「聖子ちゃんのデビューが80年の春。百恵ちゃんの引退が80年の秋。つまり80年の夏こそが2大アイドルがダブって存在した、アイドル黄金期なわけよ。ママにとっては中2の夏ね」
「聖子ちゃんがシングル『裸足の季節』でデビューしたのが80年4月1日。一方、前年に俳優の三浦友和さんとの交際を明かしていた百恵ちゃんは、聖子ちゃんのデビューの1カ月ほど前の3月7日に、婚約と、その年の秋の芸能界引退を発表したのです。春子が言った通り、80年の夏は2大アイドルがダブって活躍していた貴重な期間だった。聖子ちゃんはこの年7月3日放送の『ザ・ベストテン』(TBS系)にスポットライトのコーナーで初登場。デビュー曲を披露しましたが、ここから聖子ちゃんのアイドル人気が加速します。セカンドシングル『青い珊瑚礁』は『ザ・ベストテン』8月14日放送回で初ランクイン。徐々に順位を上げて9月18日にはついに1位に。2週連続1位となった翌週25日放送回では、百恵ちゃんからお祝いの花束が渡されました。この日が百恵ちゃんの『ザ・ベストテン』最後の出演となったのです」(アイドルライター)
まさにこの日こそ、「70年代アイドル」山口百恵から「80年代アイドル」松田聖子へバトンが渡された記念すべき日だった。
山口百恵は10月5日、日本武道館でファイナルコンサートを行い、11月19日に結婚式を挙げて引退。松田聖子はサードシングル「風は秋色」から88年の「旅立ちはフリージア」まで実に24枚連続オリコンシングルチャート首位獲得という金字塔を打ち立てた。
中学2年の春子が目にした2大アイドルの世代交代は、その後春子の人生、いやアイドルに憧れアイドルを目指した数多くの人間の運命を変えたのだ。
(石見剣)