出る杭は打たれるというが、出過ぎてしまったことが原因で、ついにプーチン大統領から見限られてしまったのだろうか。
ロシア国内の刑務所を訪問し、殺人犯などの凶悪な受刑者らをスカウト。彼らをウクライナ侵攻の最前線に送り込んでいたロシアの民間軍事会社「ワグネル」の創設者であるエフゲニー・プリゴジン氏が9日、テレグラムで受刑者の採用を打ち切ったと投稿し、内外に憶測が広がっている。
「ワグネル・グループは昨年2月の戦争開始以来、戦場で6カ月間を生き残れば赦免するとの条件付きで、囚人傭兵をリクルート。彼らはウクライナ・ドネツク州のバフムートをはじめ東部戦線に送られ、1月には戦場で6カ月間生存した囚人傭兵24人を条件通りに赦免。プリゴジン氏はメディアを通じてその様子を流すなど、大々的にアピールしました。しかし、一方では国防省との対立が取りざたされ、プーチン大統領との関係に陰りが見え始めているとの報道もあった。そんな矢先の突然の受刑者採用打ち切り宣言ですからね。クレムリンの奥で何らかの動きがあったと考えて間違いないでしょうね」(ロシアウォッチャー)
プリゴジン氏は、国内メディアに対し「囚人からワグネルへの徴集は完全に停止した。現在は同社のために活動する人員が、全ての義務を果たしている」とだけコメント。具体的な理由については明らかにしていない。
だが、昨年11月にロシアで公表された国内統計によれば、同国の受刑者数は8〜11月のわずか3カ月で2万人以上減少。これは過去10年で最大の減少だったものの、昨年11月〜今年1月では6000人程度にとどまっている。
「つまり、刑務所での徴集が明らかに失速していたということです。志願者減少の最大要因はむろん、生きて帰れないという現実が刑務所内にも知れ渡ったこと。またワグネルとしても、囚人を採用すれば彼らの武器や装備品を購入したり、戦地への輸送、食料の支給に費用が掛かり、これらが予想以上にワグネルの財政を圧迫しているとも伝えられている。正直、あまり儲からなかったということですね」(同)
プリゴジン氏は元々レストランチェーンなどを経営する実業家。そのため、ワグネルを組織した際も、最終的には金儲けがその根底にはあったのは当然だ。
「ウクライナへの傭兵派遣について、プーチン氏との間でどんな契約が交わされたかはわかりませんが、軍部からは突き上げを食らい、世論からも『殺人者を野に放つとは何事だ』と非難され、米国からは経済制裁の対象にされたあげく、ビジネスとして成り立たなければ、これ以上続ける意味はないですからね。プリゴジン氏が何も語らないので胸の内はわかりませんが、結局儲からないことはしないということでしょう」(同)
そうなると、最前線に送り込まれ、虫けらのように殺された受刑者たちは浮かばれないが、こんな無意味な戦争がいつまで続くのか…空しさが募るばかりだ。
(灯倫太郎)