36歳・ダルビッシュ「異例の6年契約」の裏にあった「パドレスの思惑」とは!?

 2月9日(日本時間10日)、パドレスはダルビッシュ有と2028年までの「6年契約」を新たに結び直したことを発表した。ダルビッシュは18年オフにカブスと「6年契約」を交わしており(20年オフにパドレスにトレード)、パドレスはその契約を引き継いでいた形だが、今回もダルビッシュが「6年」の契約延長を勝ち取ったことに驚いた関係者も少なくなかった。ダルビッシュは現在36歳だが、シーズン中に37歳になる選手が、6年もの長期契約を結んだ例はほとんどないからだ。

「ベテランは急に衰えることもあるので、今回は異例の契約と言っていいでしょう。旧契約は22年シーズンの終了までとなっていましたが、新契約は今季から28年までの6年間で、どうやら、パドレス側から交渉を持ち掛けたようです」(在米ジャーナリスト)

 ダルビッシュは昨季、194回3分の2を投げ、30先発でクオリティスタート(QS)が25回もあった。25回のQSはMLB全体で2位である。

「このクラスの投手をFA市場で獲得するとなれば、大変な金額が掛かります。パドレスは大金を投じて代わりの投手を探すよりも、『ダルビッシュの年齢』というリスクを取ったのでしょう。ただ、パドレスのA.J.プレラーGMは、ダルビッシュがレンジャーズに在籍していた時のアシスタントGMでした。彼は、ダルビッシュの力を認めているのでしょうね」(前出・在米ジャーナリスト)

 一方、今回の契約延長の背景には、昨年3月、MLBとMLB選手会の間で結ばれた新・労使協定もあったという。どういうことか。

 MLBの球団はチーム総年俸が基準額を超えた場合、「ぜいたく税」を払わなければならない。その金は年俸総額の少ない、主に地方の球団に分配されるのだが、この総年俸の基準額や他の条件をめぐり、昨年、労使が争ったのは記憶に新しいだろう。

 結果的に新・労使協定により、基準額は2億3300万ドルに引き上げられたが、パドレスは約4000万ドル超過しているという。そこにダルビッシュの新年俸が絡んでくるのだ。

「ダルビッシュの年俸は旧契約では2100万ドル、新年俸では1800万ドルです。減俸となることもあり、契約年数を長くしたのかもしれませんが、彼が年俸の減額に応じたことは、パドレスにとっては願ってもないことだったのです」(前出・在米ジャーナリスト)

 ぜいたく税の「課税方法」は、「2000万ドル未満」「2000〜4000万ドル」「4000〜6000万ドル」「6000万ドル以上」の4つに分けられている。当然、オーバーした額が大きければ課税率も高くなる。パドレスはダルビッシュの減額により、「4000〜6000万ドル」から「2000〜4000万ドル」に下がった。納める額を大幅に減らすことができたのである。

 こうして今季以降もメジャーのマウンドに立つことになったダルビッシュ。新契約の締結によって心配事もなくなった。WBCでの好投にも期待が持てそうだ。

(飯山満/スポーツライター)

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