恵方を向いて無言で食べると良いことがある。いつの間にか節分の定番イベントとなった恵方巻だが、原材料費の高騰を受け各社が前年比で70~160円前後値上げしていることが明らかとなった。大幅な価格の上昇に、売れ残りによる食品ロスを懸念する声もある。
「帝国データバンクが、全国の大手コンビニやスーパー、外食チェーンなど計104社で販売される今年の恵方巻の価格を調査したところ、一般的な五目・七目の太巻き1本の平均価格が約900円となり、前年よりもおよそ9%値上がりしていることが分かりました。物価高の影響に加え、材料に使われている卵が鳥インフルエンザ感染拡大で卸売価格が過去最高値を記録。のりも不漁によって価格が高騰していることなどから各社とも価格転嫁が避けられなかったとみられます」(フードジャーナリスト)
恵方巻1本に900円とは庶民では手が出しづらい価格になっているが、一方で心配されるのが売れ残りによる「食品ロス」だ。恵方巻は2015年頃から売れ残った商品が大量に廃棄される食品ロスが大きな社会問題となっていた。しかし、19年に消費者庁や農林水産省が需要に見合った販売をするよう業界団体に要請し、同年には食品ロス削減推進法が施行されたことから、ロスは大幅に減少したとされている。
「20年、21年と売れ残りが減少していた恵方巻ですが、22年には再び増加傾向になっているというデータもあり、その損失額は10億円にも及ぶとされています。各社、売れ残りが出ないよう予約などを強化していますが、店頭に陳列する商品をなくすわけにもいきませんからね。恵方巻は賞味期限が短く、節分を過ぎると一気に需要がなくなってしまうため、今回の値上げでどれだけ売れ残りが増えるか非常に心配な部分ではあります」(前出・フードジャーナリスト)
売れ残りを従業員が自腹で買い取るようなことにならなければいいが…。
(小林洋三)