非常事態宣言が発令された。といってもコロナの話でなく、鶏に関してだ。
「昨年10月に北海道と岡山の養鶏場で鳥インフルエンザが確認されてから、今や23県に感染が広がって、殺処分がとうとう1000万羽を超えました。かつてないパンデミックの広がりに、1月9日には野村哲郎農水大臣が『非常事態宣言ともいうべきことを発したい』と、事態の重さを訴えかけました」(全国紙記者)
猛威の理由は遺伝子変異と見られている。鳥インフルエンザは渡り鳥がシベリアから南下して、野鳥を介して養鶏場の鳥に感染することで広がる。そしてこの際、通常はカモからツルに感染してというルートを辿るものだが、今回はツルからツルへの感染も確認されているからだ。まるでアルファに始まり現在はオミクロンが進行しているコロナの変異株の話と似ている。
そこで一番頭を抱えるのが養鶏関係者だが、世の中全体が物価高で苦しんでいる現在、さらに卵の値段が上昇して家計を直撃するのだから誰にとっても他人事ではない。
「1000万羽は全国で飼育される数の約7%に当たります。それだけの数が減っているわけですから、当然、卵や鶏肉の値段も高くなります。過去5年間では12月の鶏卵卸値で19年のキロ220円前半が最高額でしたが、昨年12月は284円で過去最高でした。鶏肉も過去10年間で最高水準となっています」(同)
もともと飼料代が高騰していたところに数が不足。安値で安定していることから「物価の優等生」と呼ばれる卵だが、複合的理由で値上がりは長引きそう。なんとも厄介なことばかりだ。
(猫間滋)