ロシアの首都モスクワで11月21日、プーチン大統領と、カリブ海の島国、キューバのディアスカネル大統領の会談が行われた。ディアスカネル氏はロシア支持の立場継続を表明し、両国の結束の強さをアピールした。
プーチン氏は会談の冒頭で、「ソ連、そしてロシアは、独立と主権のために闘うキューバの人々を支持してきた。我々は、あらゆる制限や禁輸措置に反対している」と述べ、ディアスカネル氏も、「ロシアとキューバには、不公平で一方的な制裁を科してくる共通の敵がいる。それは米国。米国は世界の大部分を操るヤンキーの帝国だ!」と語り、互いの共通の敵が米国であることを改めて確認したとされる。
「会談に先立ち両氏は、モスクワ市内でキューバの英雄、故フィデル・カストロ議長の記念碑の除幕式に出席しました。16年11月に90歳で亡くなったカストロ氏はキューバ革命を率いた『反米帝国主義のカリスマ』です。とはいえ、自国の首都に銅像まで建てるほどですから、プーチン氏のカストロ氏に対する思いは特別なのです」(国際部記者)
15年7月にオバマ政権と国交を回復するまで、キューバは旧ソビエト連邦と親密な外交関係を築く一方、隣国アメリカとは激しく対立。そのため、カストロ氏は、何度も命を狙われ、06年までに、なんと638回もの暗殺未遂があったとして「世界で最も暗殺されそうになった人物」としてギネス世界記録の認定を受けているほどだ。
「プーチン氏は、かつてカストロ氏と会談した際、どうやって暗殺から逃れてきたのか、と質問。それに対しカストロ氏は『(暗殺されない理由は)常に自身の安全について、私が個人的に対処していたからだ』と答えたといいます。プーチン氏はそんなカストロ氏を非常に尊敬していたようです」(前出・国際部記者)
キューバは、西側諸国が対ロシア制裁の一環で石油などの輸入を停止、あるいは削減する中、ロシア産の受け皿となり、それは現在も継続中だ。
「ロシアとしては経済制裁が続く中、貿易が出来る国は絶対に手放したくない。しかも、キューバは60年前に『キューバ危機』(米ソ超大国の間の緊張が極度に高まり全面核戦争に突入する一歩手前にまで進展した事件)があった地で、米国に対しても、それをちらつかせることでメンタル面でも威嚇できる。だからこそ、ロシアは今年2月、キューバに対する債務(総額約2600億円)返済期限を27年まで延期すると表明したのです」(前出・国際部記者)
反米を掲げた「大ヨイショ会談」の裏で、プーチン氏は、キューバを大いに利用するつもりのようだ。
(灯倫太郎)