アニメ映画「火垂るの墓」に登場したことでも知られる缶入りキャンディー「サクマ式ドロップス」を製造・販売する佐久間製菓が、23年1月20日をもって廃業することが明らかになった。
「東京商工リサーチ」によれば、安価製品との競合に敗れ、その他のヒット商品に恵まれず、さらには新型コロナウイルスの感染拡大によって需要も減少したため、2021年9月期は1億5000万円以上の最終赤字を計上するなど財務内容が悪化したことで廃業することが決まったという。
「サクマ式ドロップスは、イギリスから輸入していたドロップスを創業者の佐久間惣治郎氏が、独自の研究を元に1908年に開発。溶けやすかったドロップスの保存性を向上させ、新鮮な味覚が楽しめるように工夫。その製法は「サクマ式製法」と呼ばれ、商品の名前にもなりました。しかし、戦争の激化を受けて44年に廃業。その後、佐久間氏と一緒に働いていた横倉信之助氏が再興させて、今日に至るまでサクマ式ドロップスの製造と販売を続けてきたのです」(経済ジャーナリスト)
同社の廃業によって、老若男女に愛され、114年もの歴史を持つロングセラー商品が姿を消すことになった。
当然ながら販売終了を惜しむ声が相次いでいるのだが、ネット上ではやや異なる話題で盛り上がっている。
実は「サクマ」の冠が付く「ドロップス」は2種類あることをご存知だろうか。「サクマ式ドロップス」と「サクマドロップス」である。話題となっているのは、この2つの缶入りキャンディーの「違い」についてだ。
ネット上では、《サクマ式ドロップスって「火垂るの墓」だと赤い缶だけど、緑の缶もあるよね?》《「サクマ式ドロップス」と「サクマドロップス」ってどっちが正しい?》などという声があがっているのである。
その「答え」について、フードジャーナリストが解説する。
「赤色の缶に入っているのが『佐久間製菓』が製造するサクマ式ドロップスであり、緑色の缶に入っているのは『サクマ製菓』が製造するサクマドロップスです。実は、この2つのドロップスは別の会社が作る別の商品なんですね。といっても、そもそもの起源は同じで、サクマ製菓は旧・佐久間製菓の社長だった山田弘隆氏の息子が、横倉氏が佐久間製菓を再興させたのとほぼ同時期に立ち上げた会社なのです。その後、『サクマ式ドロップス』という名称をどちらが使用するか裁判が行われ、佐久間製菓側が勝利しましたが、サクマ製菓も『サクマドロップス』の使用が認められ、『式』が付くものと付かないものの2つのキャンディーが誕生したのです」(フードジャーナリスト)
サクマ式ドロップスはやがて姿を消すが、緑の缶のサクマドロップスは味わうことができる。トリビアのような名称とその歴史に思いを馳せながら食べてみるのもまた一興かもしれない。
(小林洋三)