9月14日の経済財政諮問会議で、岸田首相が資源高や円安による「海外への所得流出が続く状況を抑制していく必要がある」と発言。日本では本格的な「海外への所得流出=キャピタル・フライト」が行われたことはないが、首相の発言から、なにやら現実味を帯びてきたといえる。
「22年3月末時点で家計の金融資産は2005兆円で、その半分は依然として円建ての現預金です。ところが円安でその価値は相対的に低下、8月の貿易収支は2兆8000億円弱の赤字で、過去最悪の数字です。所得の流出額は年額換算で11兆5000億円を超えています」(経済ジャーナリスト)
そこで首相も本格的に頭を悩まし始めたということなのだが、そもそもその首相が掲げる「資産所得倍増プラン」もこの流れに拍車をかけるかもしれないという。
「プランの目玉として、金融商品への投資で一定額まで期限付きで非課税にするNISAの、限度額の引き上げと恒久化という『拡充』を掲げています。最終的にどんな形になるかは今後の議論次第ですが、NISAでは、例えばアメリカ株や外国の投資信託なども投資の選択肢としてあるので、余計にキャピタル・フライトを加速させることになるかもしれません。日興リサーチセンターの試算では、2022年1〜4月の日本国内の株式投資によるアメリカへの資金流入は1兆5000億円です。NISAは期限付きであることが一番のネックとなってあまり利用が進んでいませんでしたが、限度額が上がって恒久化ともなれば、とくにお金に気を配る高所得者層が積極的に利用して、結果的に資産が海外に逃げることになりかねません」(前出・経済ジャーナリスト)
岸田首相の思惑としては、タンスに眠る預金を投資に回してもらって、日本全体の家計を底上げしようという狙いだが、より円が下がってしまっては元も子もない。
(猫間滋)