佐藤治彦「儲かるマネー駆け込み寺」新NISAスタートで投資する人がさらに有利になる

 郵便局や銀行、信用金庫などの利息はほぼ0%。そのわずかな利息から20.315%の税金が引かれる日本の税制。汗水流して働かず金をもらえるのだから税金を払うのは当たり前。日本人は不労所得、働かないで金が入ることをよしとしてこなかった。私もまともな人間はそうあるべきだと思ってきた。

 ところが、この数年で投資を始めた人の多くが利用したものにNISAという制度がある。少額投資非課税制度の略称だ。貯蓄で利息をもらうと税金がかかるが、NISAの枠内で株式や投資信託をして儲けた場合は税金がかからないというもの。

 例えば、ある株を50万円で買って100万円で売ったら50万円の儲けだ。本来はこの儲けに20.315%の税金がかかり、10万1575円の税金を払う必要があった。手取りは40万円を下回っていた。

 だが、NISAの制度では税金がかからないため、50万円まるまる自分のものになる。しかも、株式を持っていると配当金が入るが、それも20.315%の税金が不要となる。

 このNISAが来年からさらに拡充される、と投資をする人の間で話題になっている。それが「新NISA」だ。これは日本に住む満18歳以上の人が使えるもので、非課税金額が大幅に増えるなど、投資をする人はさらに有利になる。

 まずは成長投資枠といって、株式や投資信託などを自分の好きな時に売買できる枠は年間240万円の投資まで。最大で1200万円までが非課税保有限度額となる。そして、もう一つが定期的に継続して投資をするつみたて投資枠。一定の条件を満たす投資信託などが対象で、こちらは年間120万円、保有限度額は1800万円だ。

 成長投資枠とつみたて投資枠のどちらも使えるが、合計で1800万円が非課税限度額となる。ちなみに現行のNISAで売買されたもの、保有しているものは、前記の1800万円と別枠となる。もっと投資できる人は相当の資産持ちか高給取りだろう。少額非課税制度というが、ほとんどの一般個人の投資家は、そのほとんどの税金が非課税になるという制度だ。

 多くの人がさらに投資をするだろう、とネット系証券会社は株式などの売買手数料を無料にするところが出てきた。SBI証券や楽天証券だ。また、新NISA枠内での株式などの売買手数料を無料にしたのが松井証券だ。

 ちなみに私は松井証券を利用している。理由は明確で、色々と質問事項が出た時に、フリーダイヤルで相談できるからだ。それも、この手のものは電話をかけても「ただいま大変混み合っています」と待たされるものだが、投資は1分1秒が大切だと松井証券はよくわかっているのだろう。割とスムーズにオペレーターにつながるのだ。

 まあ、投資だから得することも損することもあるが、一つ私が気になることがある。

 非課税制度ということは、政府の税収を減らしてこの政策を推進しているわけだ。前記したように、この制度はすでに始まって何年も経っているが、制度利用者の投資先が気になっている。なぜなら、半分以上が海外の市場での投資、特にアメリカドルでの投資にお金を回していることだ。

 日本人が自分の虎の子の日本円を売って、アメリカドルを買って、米国株などの投資信託を買っている。これは間違いなく、今の円安となる原因の一つになっている。

 円安のため物価は高くなり、円安なので海外から買う原油価格はさらに高くなり、そのためガソリン価格も電気代も高くなっている。1ドル150円近くまで安くなった日本円は、今やアジアの他の通貨に対してもどんどん弱くなっている。今のインフレの元凶だ。これは政府が税収を減らして物価高を応援しているようなものなのだ。

佐藤治彦(さとう・はるひこ)経済評論家。テレビやラジオでコメンテーターとしても活躍中。著書「素人はボロ儲けを狙うのはおやめなさい 安心・安全・確実な投資の教科書」(扶桑社)ほか多数。

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