世界の福本豊 プロ野球“足攻爆談!”「日ハム松本剛よ、イチローを目指せ!」

 松本剛(日本ハム)がオールスターに初選出された。パ・リーグの外野部門で、ファン投票は柳田(ソフトバンク)、吉田正(オリックス)に続く3位。7月11日に発表された選手間投票では柳田に続く2位やった。同日までの打率3割6分はリーグでダントツのトップ。打つだけでなく、20盗塁もリーグ2位で、球宴に選ばれて当然の成績を残している。今年でプロ11年目の28歳。失礼ながら僕もよく知らない選手やった。去年までくすぶっていたのが不思議なぐらいの活躍や。

 野球選手はほんまに指導者との出会いによって人生が変わることがある。監督に就任した新庄が「レギュラーは白紙。横一線のスタート」の方針を打ち出し、有言実行。松本剛を開幕戦で4番・中堅に抜擢した。去年までは主に西川、近藤、淺間、大田らが外野で起用されていた。新庄以外の監督なら松本剛の開幕4番はなかったと思う。足も速いし、思い切りもいい。今の数字は期待以上やろうけど、よくぞ覚醒させた。

 松本剛は運もあった。新庄がキャンプで最初に目をつけたのは、チームで一番足の速いプロ2年目の五十幡やった。オープン戦に4番で起用していたが腰を痛めてリタイア。ヘルニアの手術を受けて、前半戦を棒に振った。五十幡は入団会見で僕の盗塁記録に挑戦すると宣言し、生きのいい若いのが出てきたと個人的にも楽しみにしていた。プロ2年目は故障さえなければ開幕からチャンスをもらえていたはずやった。

 だから、プロ野球選手はケガしたらアカンということ。チャンスはそうそう転がってない。いつも言うようにヘッドスライディングで故障するなどもってのほか。代わりの選手はいくらでもいるし、他の選手に出場のチャンスを回したら、職場を奪われるぐらいの危機感を持ってほしい。

 去年はオリックスの杉本が中嶋監督のもとで目覚めて、プロ6年目の30歳シーズンで本塁打王になった。松本剛もこのまま首位打者のタイトルを獲ってもおかしくない。それと僕が期待しているのは盗塁王争いを盛り上げること。去年は荻野、和田(ともにロッテ)、源田(西武)、西川(日本ハム)の4人が24個で談合したかのようにタイトルを分けた。4人で100に届かないなんて寂しすぎた。

 選手はライバルの成績を見ながら走るから、誰かが引っ張れば、数字も伸びてくる。今季はロッテの髙部が早くも30個近く走っていて、タイトル争いをリードしている。こちらも松本剛と同じように今年から売り出し中の選手。絶対にタイトルは獲りたいはずで、競り合いになれば軽く50は超してくる。ただし、盗塁を増やすには、まずは塁に数多く出ること。髙部はまだ打力が弱いから、レギュラーとして最低限となる打率2割5分をキープできるかがカギとなる。

 松本剛は髙部より出塁する力があるから、5、6個ぐらいの差で追いかけていれば、逆転のチャンスがある。新庄監督もドンドン走るよう背中を押してくれるはず。首位打者と盗塁王の2冠となれば、1995年のイチロー以来となる。新しいスター候補として、まずはオールスターの舞台で打って、走って全国にアピールしてほしい。新庄みたいにホームスチールまではしなくていいけど、マークがきつくてアウトになるとわかっていても、走らなアカンで!

福本豊(ふくもと・ゆたか):1968年に阪急に入団し、通算2543安打、1065盗塁。引退後はオリックスと阪神で打撃コーチ、2軍監督などを歴任。2002年、野球殿堂入り。現在はサンテレビ、ABCラジオ、スポーツ報知で解説。

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