ロシアのショイグ国防相は3日、ロシア軍と親露派武装勢力がウクライナ東部ルガンスク州の全域を掌握したと発表。現在はドネツク州に戦力を集中させ攻撃が激化、制圧間近とも伝えられている。
ロシアのプーチン大統領が、親露派勢力が名乗る自称国家「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の独立を承認したのは今年2月22日のこと。両“共和国”は2014年に一方的に独立宣言し、ウクライナ政府との間で内戦になっていたが、プーチン氏はこれらの地域に「平和維持」を目的としてロシア軍を派遣することを指示。2日後に、ウクライナに対する軍事侵攻が始まったのは周知のとおりだ。
この「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」については7月13日、北朝鮮が唐突に国家として承認すると発表。両地域を独立国家として認めたのは、ロシア、シリアに続いて北朝鮮が3カ国目となり、ウクライナは即座に北朝鮮との断交を宣言し、長年にわたる両国の友好関係は絶たれた。
すると今度は18日、ロシアのマツェゴラ駐北朝鮮大使が「北朝鮮と共和国の協力の可能性は非常に幅広い」とロシア紙・イズベスチヤのインタビューに答え、「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」に北朝鮮の建設労働者が派遣される可能性に言及。「勤勉で技術力のある北朝鮮の労働者が、戦火で破壊されたインフラや施設を復旧させるのに重要な援軍になる」と発言し波紋が広がっている。
「マツェゴラ氏は同紙のインタビューに、『北朝鮮の製鉄所や運送機械会社では、旧ソ連の技術支援でドンバス地域の重機械工場で生産された機械が使用されており、北朝鮮労働者は自国の機械の改善・補修のためにも、現地で生産される部品や設備に関心が高い』と、双方のメリットを強調しています。しかし、2017年に採択された国連安保理の対北朝鮮制裁決議によって北朝鮮労働者の海外派遣は禁止されており、2019年末までに全員本国に送還するよう加盟国に通達を出しています。つまり、いかに復興目的とはいえ、ロシアが北朝鮮労働者の手を借りることは、国連制裁違反になるわけです」(北朝鮮情勢に詳しいジャーナリスト)
とはいえ、そもそも国連の言うことに素直に従ってこなかったロシアと北朝鮮だ。しかも、西側から経済制裁を受けている今、いまさら「制裁違反」と脅されても痛くも痒くもないだろう。
「実際これまでにも、ロシアは学生ビザや観光ビザで、北朝鮮国籍の人間をどんどん入国させているという事実もあり、今回もそういった『抜け道』を巧みに使って、北朝鮮の労働者を入国させる可能性は十分考えられる。悲しいかな、ロシアや北朝鮮に対しては、国連の力がほぼ及んでいない現実があるということです」(同)
ここにきて、世界の分断の溝はさらに深まっている。国連が正常に機能することを願いたい。
(灯倫太郎)