全てが彼のせいではないけれど、ツイッター社は今、多難に直面している。もちろん彼とはイーロン・マスクのことで、4月に敵対的買収に乗り出したかと思えば、「スパムアカウントが5%以下だという根拠」が曖昧として、5月には買収を保留。すると6月16日には従業員と初めてのオンライン会合を開催し、「現状はコストが収益を上回っている」として、一時解雇の可能性を示唆した。「いったいどうなるのだ」と、社員は戦々恐々というのが本音だろう。
そのツイッターでは、来年1月に行う予定の社員旅行が中止に追い込まれたのだという。
「ツイッター社は先日、来年1月にディズニーランドで行われるはずだった社員旅行を中止にするとしました。日本ならいざ知らず、アメリカの会社で社員旅行?と奇異な感じに受け取られるかもしれませんが、同社では『ワンチーム』と呼んで特別なイベントとしてこれを捉えています。ところがコロナで20年に開催されて以後は行われていませんでした。だから今回の中止決定も『苦渋の決断』であったとしています」(経済ジャーナリスト)
理由は経費節減だ。マスクが買収を一時保留したのには、440億ドル(約5兆7000億円)にも上る買収金額を下げる狙いがあるのではとされている通り、経営の透明化を迫られている。だから解雇をチラつかされるし、経費節減も求められる。「苦渋の決断」が迫られるわけである。
同社では最近2人の幹部が解雇され、4日後に入社するはずだった人の採用が急遽取り消された。買収の保留という武器を振りかざして、マスクがツイッター社を締め上げている構図がそこには浮かぶ。
ただ全てが彼のせいというわけでもない。
「アップルが昨年4月に導入した新たな広告規制で、ツイッター以外のフェイスブック、ユーチューブも含めた広告収入は大きく鈍化し、SNS企業は苦戦を強いられています。なので現在の状況は、マスクが傷口に塩を塗り込んでいるようにも見受けられます」(同)
ただマスクもマスクで、ツイッター社の買収では、ツイッター社の株主から「意図的に株価を下落させた」として提訴されたり、アメリカ証券取引委員会から株式取得の開示や報告の遅れで疑いを持たれている。社員旅行まで取り上げられて面白くはないだろうが、新たなスポンサーと何とか上手くやっていくしかなさそうだ。
(猫間滋)