ウクライナ侵攻で国際的な批判が高まる中、IPC(国際パラリンピック委員会)が、ロシア並びに同国と軍事面で協力関係にあるベラルーシ選手団の、北京パラリンピック大会参加を除外すると発表したのは3月3日のこと。五輪直前の除外勧告にロシア側は「受け入れ難い暴挙」と強い怒りを示したものの、結局従わざるを得ず、北京入りしていた選手団は6日、失意のうちに帰国の途に就いた。
ところが、パラリンピックが終盤に差し掛かった10日、ロシア国営通信社「タス通信」が、ロシア中部のハンティ・マンシースクにおいて18日から「パラリンピックの代替大会」を開催すると発表。北京パラ除外を受けたベラルーシほか、アルメニア、タジキスタンのパラアスリートも参加する公算が大きいという。
「ロシアは旧ソ連時代からスポーツを国策と位置づけ、プロパガンダにも利用してきました。プーチン大統領自身も、柔道やサンボの有段者であることから、スポーツに対する造詣が深く、自国アスリートたちの練習環境を充実させるために尽力は惜しまなかったといわれます。ところが今回の軍事侵攻により、自国アスリートの国際大会参加じたいが危機的な状況になってしまった。国民の士気の低下も避けられません。そこでロシア政府は、世界のスポーツ界への対抗策として、この代替大会の開催を決めたと言われています」(スポーツジャーナリスト)
報じられているところによると、代替大会はドミトリー・チェルニシェンコ副首相が陣頭指揮を執り、国際オリンピック委員会(IOC)が国際大会での使用禁止を勧告したロシア国旗、国歌も使用される予定。
「競技はクロスカントリースキー、アルペンスキー、バイアスロン、カーリング、スノーボードなど6つ。金メダルには日本円にして約400万円、銀メダルには約250万円、銅メダルには約170万円の賞金が贈呈されるといいます。ベラルーシのほかにも、親ロシアの複数国が強い関心を示していると伝えられ、また、北京パラリンピックに不参加だった北朝鮮が水面下で名乗りを上げているとの情報もあります」(同)
ロシアとしてはこの代替大会を足掛かりに、西側諸国を中心とした現行の組織に依存しない独立したスポーツの枠組みを作ろうと画策しているというわけだが、そうなると俄然注目されるのが、開会式における大統領のスピーチだろう。
「ロシアメディア『URA』は、大統領補佐官のイーゴリ・レビチン氏をはじめ、スポーツ大臣のオレグ・マティシン氏、ウラル地方大統領特使のウラジミール・ヤクシェフ氏ら『連邦政府の政治家が出席する予定』と伝えていますが、五輪やパラリンピックの開閉会式には、開催国の首脳が出席するのが通例。しかも、今後のロシアスポーツ界を左右するような重要な大会であるならなおのこと、プーチン大統領が出席する可能性は高いとみて世界の注目を集めています」(同)
暗殺を恐れているとも報じられるプーチン大統領だが、はたして公の場に姿を現すことはあるのだろうか。
(灯倫太郎)