Yahoo!に続いてANAも…「転職なき移住」国も支援で一気に広がるか?

 1月12日、ヤフーは4月1日から国内約8000人の従業員に「どこに居住してもOK」で、飛行機や新幹線で出社しても月15万円までは支給と打ち出したことで、週のうち数日のリモートワークはおろか有無を言わさず毎日出勤を強いられているサラリーマンから羨望の眼差しを向けられたばかり。

 すると今度はANAでも地方移住制を4月から導入すると発表があって、こうした「転職なき移住」というのが1つの働き方のトレンドとなりつつあるようだ。

「居住地制限の撤廃については、既にメルカリ、LINE、GMOペポパなどで導入されています。IT企業での導入が多いのは、働く場所を問わないリモートワークで仕事として成立するから。これが前提としてあり、優秀なIT人材を集めるには働き方の自由を認める必要があるという、売り手優先の雇用環境にあるからでしょう。一方ANAの場合は、パイロットを除く3万8000人の社員がグループ内での転籍という形で、例えば全国各地の航空運営会社に勤めるというもので、働き方の自由とは異なります。またANA本体では受け入れ先に限界があるため、グループ内に転籍すると転籍先の給与水準に下がる可能性があり、要は人材流出に歯止めをかけるためといった消極的な面が取り上げられています」(経済ジャーナリスト)

 ただそうは言っても、両親の近くに住みたい、子供が伸び伸びと成長できる環境で暮らしたい、アフター5の生活を充実させたいなど、首都圏に居住する意味が疑われる時代になっている。そこで企業としても「転職なき移住」を認めることで人材確保ができ、会社全体の生産性も上がるならと、本社の移転や社員の居住の自由を認めるケースは徐々に増えている。

 有名なのは本社を淡路島に移転したパソナのケースだが、その他にも例えば富士通では大分県と協定を結んで昨年春から社員の移住を促した結果、数名の社員が大分県に移住した。これももちろんテレワークで仕事に支障が生じないからだが、地方生活に必須の車も家賃が格段に安くなったので十分に賄え、家庭の事情によっては両親の近くに住めることから好評だという。

「政府もこういった動きを後押ししようと、20年度の補正予算で地方創生テレワーク交付金で100億円の予算を計上、さらに22年度予算では地方創生関連で1268億円の予算を積む予定で、『転職なき移住』を広めようとしています。すると今度は地方自治体が移住者の獲得合戦に躍起になって、例えば長野県の佐久市では移住者に月額2.5万円の通勤費を最大3年間支給するとして、移住の相談件数が全国1位になっています」(同)

 その他でも、地域での起業に最大200万円の支給や地域での就業での移住で最大100万円の支給、県外からの本社移転で最大640万円の支援…といった呼び込み策が全国のあらゆる自治体の間で展開されている。

 東京から高知に移住したブロガーのイケダハヤト氏が、「まだ東京で消耗しているの?」のキャッチフレーズで世間を挑発したのが2014年のこと。そこから7年を経て、東京脱出の動きが各所で加速しつつある。

(猫間滋)

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