コロナ禍時の閑散がウソのように賑わいを取り戻している各地の空港。国土交通省の発表によると、23年の定期便の旅客数は、国内線が1億397万人と、コロナ前の18年とほぼ同じ水準に回復し、今年はさらに増加する見込みだ。だが、思わぬ障害も起きているという。
航空各社は需要増加に合わせて新規就航や既存路線の増便を検討していたが、航空燃料が不足していることから、実施できずに断念するケースが続出しているのだ。7月17日配信の「FNNプライムオンライン」は、断念された便数は週100以上に及ぶと報じている。
「この数字は、JAL、ANAの機材でもっとも多いボーイング737-800(国内線仕様)で換算すると、1万6500席以上にもなります。LCCの主力機であるA320も1機で約180席と、同機より座席数が多いことを勘案すると、毎月億単位の収入機会を失っていることになりますね」(航空業界に詳しい大手紙記者)
しかも、これは日本の航空業界だけでなく、世界中で起きている。現在は各国の間で燃料の争奪戦が繰り広げられている状況だという。
ただ、日本政府は19日に開かれた観光立国推進閣僚会議の中で、週150便超に相当する燃料を新たに確保する対応策を発表した。これにより増便の断念が解消される可能性が出てきたのは喜ばしいことだが、いいことばかりではないようだ。
「現在は原油価格の高騰に伴い、航空燃料の値段も上がっています。深刻な燃料不足が起きるほどの需要がある以上、今後さらに相場が上昇する可能性は高い。そうなれば当然、運賃の値上げという形で反映されることになります」(前出・記者)
実際、各航空会社の国内線の運賃はコロナ前に比べて上がっている。今やすっかり定着したLCCの利用だが、この状況が続けば、LCCも気軽に利用できなくなる時が来るのかもしれない。