「キラキラネーム」は許容されない?デジタル庁創設で審議

 デジタル庁の発足といえば、退陣が決まっている菅首相の最大の“置き土産”の1つ。おかげで行政が簡素化・市民サービスも向上という、DX(デジタルトランスフォーメーション)時代に適ったもので万々歳とのことだが、もしかしたらこれでキラキラネームも付けにくくなるかもしれない。

「上川陽子法相は9月7日、戸籍と名前の読み方をどう扱うかについて、法務省の諮問機関である法制審議会に諮るとしました。デジタル庁の創設で、古臭い戸籍をどうデジタル化していくかを審議する必要があるからです。戸籍の取り扱いについてどうするかについては、既にデジタル庁の構想が持ち上がった時から検討材料となっていました」(全国紙記者)

 具体的にはどういうことか。実は戸籍は名前の「漢字」のみを届け出るもので、その「読み方」の届け出を義務付けてはいない。通常は「この漢字を書いてこう読む」というのが名前の考え方だが、戸籍では「どう表記するか」しか問うてはいないからだ。

 とはいえ、当然名前には「読み」があって、それはいわゆる住民票(住民基本台帳)に記載するようになっている。人の名前とは、この戸籍の「漢字」とそれを補うかのような住民票での「読み」で成り立っているのだ。

 だから「名前を変えたい」と考えた場合、「読み」を変えるなら自治体の役場で「住民票ふりがな修正申出書」を提出すればよく、手続きは意外に簡単だ。ところが、戸籍の「漢字」を変えるとなるとグッと難易度が上がって、例えば①奇妙な名前、②難しくて読めない、③同姓同名がいて不便…など、戸籍法が定める「正当な事由」というものが求められ、さらには家庭裁判所の許可を得る必要があり、非常に面倒だ。裁判所のHPによれば、「単なる個人的趣味、感情、信仰上の希望等」のみでは「正当な事由」に足りないとある。

「それがなぜ今回のデジタル庁発足で問題となっているかと言えば、戸籍は『漢字』のみを扱っているので、デジタルにそぐわないからです。だから、戸籍は簡単に検索できるようにアルファベット表記などといった『読み方』の方に寄せる方がDX時代に相応しいのではないかと議論されてきたわけです」(前出・記者)

 するとキラキラネームのような、その漢字からは読めないような名前については、どっちが尊重されるべきかという問題が生じる。ネットで2021年上半期のキラキラネームランキングなるものを検索してみると、1位は「陽翔」と書いて「はると」と読む名前が人気があったようだ。

 この場合、すぐに「はると」と読める人はそうそうはいないだろう。そしてもし将来、そこのところに本人が不便や不満を感じたとしても、従来であれば「漢字」に沿った「読み」を変えることは出来たが、今度は「読み」に寄せて「漢字」を変えなくてはならないことになる。キラキラネームの場合、「漢字」と「読み」に乖離があるので、この辺りのストレスが生じやすくなる。

 古くは1993年に「悪魔」という名前の出生届が出された「悪魔ちゃん命名問題」が起こったり、19年には「王子」という名前の男性が「肇」という名前に改名したことで全国的なニュースにもなった。DX社会では、子供の名前を付けるにもまた違った事情になってくるようだ。

(猫間滋)

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