オリンピックの選手村に入れるIDカードを首から下げ、韓国国旗の「太極旗」が胸に付いたシャツを着た男性が、ハンバーグやピザを頬張りながら韓国語で「おいしいです」と感想を漏らす。
その模様を報告する画像が日本国内のSNS上にあがったのが7月28日のこと。ところが、韓国のオリンピック委員会を兼ねる大韓体育会は、福島県産の食材が使われている選手村の食事を避けるために独自の弁当を用意するとしていたため、波紋を広げている。
「先月19日には、選手村の食事に福島県産の食材が使われるのを懸念して、韓国が独自の給食センターを設置したことを聞いた福島県の内堀雅雄・県知事は怒り心頭。『科学的データなどの事実をきちんと把握していない』と吐き捨てるという一幕もありました」(全国紙記者)
「過去最悪」と言われる日韓関係の中、五輪開幕前の韓国国内では参加をボイコットするのではという観測さえあった。いざ開幕となるや、その直前に選手村に反日感情を煽るような垂れ幕をかけたり、福島県産の花が使用されているブーケに「放射能の懸念がある」と韓国メディアが報じたりと、こと日本に関しては、お隣の国は「平和の祭典」という言葉の意義を忘れがちにみえる。
ただ、じつは自国から食料を調達する国がもう1つあって、それが日本と最も近い国であるアメリカだというのだから、事態をさらに面倒なものにしている。アメリカも韓国と同じように、給食支援センターを設置して7000食分の食事を用意している。なので韓国サイドは、相手がアメリカだと日本は黙ってしまうとして、問題視しているのだ。
確かに一見すると日本の姿勢はダブルスタンダードのように見えるが、実情は大きく異なる。
「両国が弁当を支給している理由が違います。韓国の場合は『拒否』ですが、アメリカの場合は『選手が好む食事の提供』が目的であること。国による独自食の提供はこれまでの五輪でもおこなわれており、日本は2018年の平昌オリンピックで、韓国も16年のリオデジャネイロ五輪で自国選手に弁当を提供しています。今回アメリカが採ったのは過去に日本と韓国が行ったものと同じで、そこに政治の問題はありません。ところが今回の韓国は、福島県産の食材を摂らないよう注意喚起まで行っていて、過去の事例から見ても極めて異質です」(前出・記者)
7月29日、加藤勝信官房長官は「被災地の食材の活用などで復興五輪の推進を図る」と、風評被害を払拭する考えを示した。オリンピックも折り返し地点。後半戦ではどんな問題が持ち上がるやら。
(猫間滋)