世界の福本豊 プロ野球“足攻爆談!”「オリ杉本よ、夏休みに恩返しや!」

 プロ野球は東京オリンピックを挟む中断期間に入った。この25日間の過ごし方は、めちゃくちゃ大事になる。しっかりと調整できた球団が優勝に近づくことになると思う。

 シーズン中にこれだけ長い休みに入るのは、前例のないこと。僕は8月13日の後半戦開幕に備えて、各球団はもう一度キャンプを張るぐらいに鍛えるべきやと考えている。エキシビションゲームも組まれているけど、それはあくまで練習試合なんやから。その試合でいくら打っても、いくら抑えても、給料には跳ね返らない。ゲームに出ながらでもいいから、練習でもう一度足回りを鍛え直したほうがいい。

 例年なら、この時期はキャンプで作った体の「貯金」がなくなる頃。バッターは振りが鈍くなるし、投手も球の切れがなくなる。これを「疲労の蓄積」ととらえるか、「キャンプの貯金がなくなった」と考えるのか。でも、疲労と思っているようでは考え方が甘い。疲れなんか、1日ゆっくり寝たら取れるもの。

 僕も現役時代に調子が悪くなった時は「走っとけ。それが後々に生きてくる」とコーチに言われて素直に従ったけど、ほんまに効果があった。400勝投手の金田正一さんにも「お前は足で稼いだ選手やから、走ることの大切さを伝え回ってほしい」とよく言われた。今はウエートトレとか科学的なトレーニングが重視されるけど、昔ながらの「走る」練習をおろそかにしたらダメや。腕を前後に振って走ることで、体のバランスもよくなるし、故障にも強い体になる。

 パ・リーグ首位、オリックスの杉本は、特にこの休み期間を大切にしてほしい。これまで1年間、フルに働いた経験がないんやから。2015年にドラフト10位で入団して、6年目の30歳。ルーキーの頃から応援してきた選手がようやく今年、1軍で結果を残し始めた。ここまで打率2割9分7厘、18本塁打、54打点。昨季までわずか9本やった男が、オールスターでも初出場してホームランを打った。ラオウという愛称も定着してきて、首位ターンの立役者の一人に成長した。

 去年まではバットに当たったら飛ぶけど、たまにしか当たらん打者やった。今年は振り回すだけでなく、軽打を覚えて、状況に応じた打撃をできるようになった。何よりも大きいのが、中嶋監督の体制に変わって2軍で鍛えてもらい、我慢して使ってもらえるようになったこと。球団は昨オフの自由契約リストに名前を載せていたけど、中嶋監督の評価が高かったという。しっかり活躍して、恩返ししないといけない。

 心配なのは、少しお調子者タイプなこと。5月末には都内のホテルに女性3人を招き入れて、ほかの選手2人と会食したことがバレて、球団から厳重注意処分を受けた。僕もLINEで本人にチクッとやったけど、応援してくれている人を裏切るようなことをしたらアカン。今の成績が「まぐれ」と言われんように、死にもの狂いで野球に取り組んでほしい。

 他球団はこの期間にもう一度データを洗い直して、対策を立ててくる。「まずは疲れを取って」など、甘い考え方をしてたらアカン。誰よりも汗をかいて、8月13日から好スタートを切れる準備をするべき。青学の後輩の吉田正尚とともに後半戦も打線を引っ張れば、オリックス25年ぶりの優勝が見えてくる。

福本豊(ふくもと・ゆたか):1968年に阪急に入団し、通算2543安打、1065盗塁。引退後はオリックスと阪神で打撃コーチ、2軍監督などを歴任。2002年、野球殿堂入り。現在はサンテレビ、ABCラジオ、スポーツ報知で解説。

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